山田厚史(やまだ・あつし)
ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。横浜市長選挙が「菅政権の命運を賭けた選挙」になってきた。同時に、最大の焦点だった「カジノ誘致」が急速にしぼんでしまった。「カジノは東京に行くのでは」。そんな声が自民党関係者から漏れる。いったい何が起きているのか。
記事全文>>横浜市長選挙が「菅政権の命運を賭けた選挙」になってきた。同時に、最大の焦点だった「カジノ誘致」が急速にしぼんでしまった。「カジノは東京に行くのでは」。そんな声が自民党関係者から漏れる。いったい何が起きているのか。
記事全文>>今回から「人口動態と日本経済」の第2シリーズとして、「人口動態と労働市場」(全5回)をお届けする。
働き手の中心となる生産年齢人口(15~64歳)は、今後年率1%程度のスピードで減少していく。実質成長率や国民1人当たり実質成長率を維持するには、①就業者の増加と②労働生産性の向上が欠かせない。
就業者の増加を期待できるのは、女性、高齢者、外国人の三つのカテゴリーしかない。それぞれの現状評価に先立ち、第1回の本稿では、生産年齢人口の減少が労働力にどれほどのインパクトをもつかを確認してみよう。
記事全文>>日本は世界の他の国々と比べてみると、極めてユニークな雇用慣行を採用している国である。それが「終身雇用」と「年功序列賃金」である。なぜ日本はこのようなユニークな雇用慣行を採用してきたのであろうか? その理由を知るには日本の歴史を振り返る必要がある。第2次世界大戦によって社会的な働き手世代(生産年齢人口)を大量に失った日本は、人手不足を補うために若手の未経験者を採用するしかなかった。戦時中の日本政府の「産めよ、殖(ふ)やせよ、国のため」政策により発生した団塊世代の人たちである。しかし、未経験者に対して復興過程の日本企業は高額の賃金が払えない。一方で「金の卵」である若手労働者を他社に引き抜かれないようにしなくてはならない。こうした時代の必然によって生み出された雇用慣行が「終身雇用」と「年功序列賃金」である。この制度の本質は「キャリアの途中までは貢献度より低い給料を支払い、50歳くらいで貢献度より高い後払い賃金をもらえる」という「生涯賃金の後払い」の仕組みである。
記事全文>>無観客五輪とワクチン失速。菅義偉首相の再選シナリオは狂った。オリンピックさえ始まれば、国民の気分は一変する。オリパラが終わる頃、ワクチン接種は一巡し、感染への不安は薄らぐ。五輪の高揚感と、コロナ危機の沈静化。そのタイミングで解散に打って出れば勝機はある。自公安定政権を守れば自民党総裁選を突破できる――。
都合のいい楽観論だが、これ以外に政権延命の道はない。政治家人生を賭けた大博打に出た、というのが現状である。
記事全文>>コロナ渦で世界の先進諸国との対比で経済力や技術力の劣化が顕在化してきた日本の「コロナ敗戦」。その「コロナ敗戦」から立ち直るため、前回の拙稿第196回「人事部と企画部を解体して『コロナ敗戦』から立ち上がろう」(6月18日付)で、人事部門と企画部門の撤廃を提言した。そもそも経営者の職場放棄と人事・企画両部門の自己増殖機能で、日本独自の形態で人事部と企画部が強大化してしまったのは既に論じてきたとおりである。私が勤務経験のある米国、タイとも、会社内に企画部は存在しない。また日本の影響力の強いタイでは、日本型人事制度も導入されているが、日本の会社のように人事部が人事権を持ち強大化していることはない。オーナー経営者が大半のタイ企業にあって、経営者の権限をおびやかすような組織は成立しないのである。
記事全文>>◆はじめに――国は引っ越しできない
「自由で開かれたインド太平洋」という日本発の外交構想がある。2016年に当時の安倍首相(第2次)が提唱したもので、米国をはじめ国際的な支持の広がりが見られ、日本外交の成果とされる。中国の海洋進出を念頭に置いたものであり、日本の外交戦略に地政学的視点が導入された例として知られる。
近年、国際的な緊張の高まりを背景に、地政学の「復活」が言われている。そこで、今回は地政学をテーマにしたい。地政学の説明で一番気に入っているのは――人は引っ越しできるが、国は引っ越しできないので地理的条件で国際関係を考えること(*注1)――というものだ。日本は米中ロの間に位置し、友好的な隣国はないという厳しい環境におかれている現実を直視した、地政学的思考が求められているのである。
記事全文>>NHK内部がざわついている。4月にあった役員人事で、異常事態が起きた。前田晃伸(てるのぶ)会長(82)に次ぐ高齢の実力者・板野裕爾(ゆうじ)専務理事(67)を「退任」とする人事が経営委員に出されたが、直前に取り消され、「再任」となった。毎日新聞(6月28日付朝刊)が内幕をスクープし、衝撃が走った。
記事全文>>前回、就業人口と総人口のバランスを維持するには、70歳代半ばまで働く必要があると述べた。
今回は、少し別の角度から確認してみたい。過去、日本人が一生のうちどの程度の期間を勤労に割り振っていたかを試算してみる。改めて分かるのは、今の日本人がいかに長生きする社会に生きているかだ。
記事全文>>コロナ禍の中で世界の先進諸国との対比で日本の経済力や技術力の劣勢が顕在化してきた。名付けて「コロナ敗戦」である。人は単純明快な理屈を好む。そのため今回の日本の劣勢の原因を「新型コロナウイルス」と「デジタル力」に結び付けて語りたがる。しかしタイに住む私はかねて、日本の製品がアジア市場で徐々に存在感をなくし、中韓企業などに取って代わられているさまを目の当たりにしてきた。そしてその事実を10年近く、この「ニュース屋台村」に投稿してきた。
さらに新型コロナウイルスは日本の実力低下をいっそう加速させてしまった。人は見たくない現実から目をそらす。しかしさすがに国内にいる日本人も「コロナ敗戦」を認めざるを得ないほどの状況になってしまった。だが、その原因を「コロナ」や「デジタル力」だけに起因させるとしたら、日本は何も反省していないことになる。幾重にも複雑に絡み合った構造問題がそこに横たわっている。今回はそのうちの一つ、日本の組織・体制の在り方に焦点を当てて論じてみたい。
記事全文>>東京五輪に関する朝日新聞の「ダブルスタンダード(二重基準)」について前回、触れた。「中止」を主張する社説と、オフィシャルパートナー(OP)として五輪協賛を続ける経営が矛盾するという指摘は、ネットメディアを中心に広がっている。朝日の社内では「社説」に風当たりが強まっているという。改めて考えてみたい。新聞の社説とは何だろう。
私は、朝日新聞社が東京五輪の協賛企業になっている事実を確認するため、朝日の広報室に「スポンサー契約書(OP契約書)」の開示を求めた。併せて、「協賛企業になったら、言論活動に影響が出ませんか?」などの疑問を投げかけた(5月21日)。広報室から回答が来たのは5月26日。「中止」を主張する社説が出たその日だった。その後のやりとりを含め、朝日新聞の回答には、納得のいかないことが多い。新聞のあり方を考える人たちの参考になればと思い、取材経過をここに公開する。
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