引地達也(ひきち・たつや)
コミュニケーション基礎研究会代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長などを経て、株式会社LVP等設立。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。
◆命から遠い言葉
安倍晋三首相の言葉が受け入れられない。死者を出す可能性がある戦いを想定している議論の中で、命を語るには、あまりにも軽く、凄みもないし、覚悟も感じられない。ただ「命」からかい離した国家観ゆえの信条にとらわれた、国家を「おもちゃ箱」のようにして、もて遊んでいるように思える。勿論本人は「私は真剣だ」と反論するだろう。ただ真剣になればなるほど、その真剣の深さが問われるが、結局かの人の世界観は、人の命を語れるほどの信頼を得ていない。
政治家経験の中で政治のコンテクストにおいては、政局の運営や政策が混乱する中での解答へ導く方程式を学んだかもしれない。しかし命は政治のコンテクストでは語ってはいけない。命をめぐる議論では、文学的なコンテクストを交えて語るべきだと私は考えるが、人文系学部の廃止などを国立大学に求めている政権では、その「文学的」発想を排除しているのかもしれない。言い換えれば、受け入れられないのは、命を無機質に議論している恐ろしさへの反発でもある。
記事全文>>










