п»ї 「障害者総合支援法」改正の施行を前にした就労支援の心構え 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第261回 | ニュース屋台村

「障害者総合支援法」改正の施行を前にした就労支援の心構え
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第261回

8月 30日 2023年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆ミスマッチの反省

2022年12月に国会で可決した「障害者総合支援法」改正案は2024年度から施行される。「障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて(議論の整理)」としてまとめられた改正案は「障がい者の地域生活」「社会的ニーズへの細かな対応」「質の高い障がい福祉サービス」の三つの柱からなる。

多様な就労ニーズへの支援と障がい者雇用の質の向上を目的とした改正は、自分の就労支援に関する動き方を再考しなければならない。これは障がい者雇用でミスマッチが生じている現状を改善しようとする中で考えられたものであり、福祉サービス全般に対して、これまでの動き方からの変化を促すものでもある。

私の解釈では就労系サービスにおける当事者視点での支援とその共有が益々重要で、支援でのコミュニケーションの質の高さが求められる。同時に改正案が促す行動の変容は、当事者にとっては自分の就労イメージに近づける希望の道筋として捉えたいと思う。

◆「就労選択支援」の創設

障害者総合支援法は、正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」と言い、社会における障がい者の考え方を反映してきた。当初は「障害者自立支援法」という名称であったが、「自立」への批判も起き、2013年から「障害者総合支援法」に変更された。

基本的には障がい者が福祉サービスの給付制度や、障がい者の生活支援を充実させることを目的とし、重度訪問介護の対象者の拡大や地域生活支援事業の実施など、障がい者福祉の内容の拡充を図ることも明記されている。

今回の改正案は柱の一つである「障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進」で示しているのは、就労希望者がより自分に合った仕事に就けるような仕組みを構築するための「就労選択支援」を創設である。

◆アセスメントの活用

この支援の具体的な形はまだ見えないが、どのような職が適切かを測る「就労アセスメント」の考え方を援用する形を想定しているようである。背景には障がい者雇用の仕事のミスマッチが職場でのうつ病の発生などの二次障害や就労の定着の難しさの要因として考えられており、この解消を目指しているのであろう。

現場の感覚からは、それが「アセスメント」の質の向上だけで解決するとは思えない。どんな支援も同じなのだが、支援におけるコミュニケーションの質が確保されてなければ、よいアセスメントにはたどり着けないだろう。

就労支援の中で本人の希望の尊重と、その尊重に沿った形で選択できないかを支援側も配慮することになるのは当然で、それは当事者の思いを共有するコミュニケーションの力が試されることになる。ここで留意したのが、ハローワークや就労支援機関でのアセスメントは、硬直化した内容になりがちだから、自由に自分の思いを表現できる環境のもとでアセスメントを取ることを必須にしなければいけない、ということである。

◆目線違う「きめ細かさ」

障がいによりこの社会と「ミスマッチ」している現実が多い当事者が、世の中の仕組みに合わせようとすると、どこか無理な状況に追い込まれる。

就労のミスマッチもまさにこの現象の一つである。だからこそ、柔軟で適切なアセスメントの手法が望まれる。「本人の就労能力や適性」「本人がもつ強みや課題」「働く上で必要な支援や配慮」をポイントとして、本人の疾患や障がい特性を共有し、関係機関によるケース会議によりアセスメントが決定していくことになりそうだが、メンバーが多くなればなるほど、その内容は硬く、そして実態から離れていく可能性が増す。

誰もが「障がい者が働きやすい社会を実現するためには、障がい者個人の希望や能力に沿った就労が実現するよう、きめ細かな支援が求められている」とは言うものの、その「きめ細かい」は、当事者目線か支援者目線かで大きく違う。

来年度の施行を前に当事者の気持ちが自由に示せる制度設計が望まれる。そして、支援者側は最適なアセスメントに向けて現場で考え、与えられる最適ではなく、自分らが創造する心構えで取り組むのが全体の最適に結びついていくのだと思う。

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