記者M
新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間120冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング
東京・永田町の国会議事堂の正面左手に憲政記念館がある。憲政の功労者である尾崎行雄(1858~1954)を記念して建設された尾崎記念会館を吸収して、衆議院が1972年に開館したものだ。尾崎といえば、アメリカのポトマック河畔の桜並木は彼が東京市長当時の1912年に贈ったソメイヨシノなどを元にしているが、憲政記念館の庭園にもこの春、39種類の桜の木が花をつけた。都心の一等地にありながらこれだけ多くの種類の桜が楽しめるのはここだけである。しかも、いつ訪れても人はまばらで、都心の観桜の穴場と言っていいだろう。
すべての種類の桜が一度に満開になることはないが、ソメイヨシノが散った後も「兼六園熊谷(ケンロクエンクマガイ)」や「八重紅枝垂(ヤエベニシダレ)」などが見事に咲き誇り、移りゆく最後の春を楽しむことができる。東京の桜の季節が幕を閉じようとしている4月初め、僕はこの庭園の高台に立ち、そこから見渡せるところで起きた歴史的な事件を思い起こし、まさにタイムスリップしたような不思議な感慨にとらわれた。
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