п»ї 一つの道をひたすら突き進む-地域再生への提言(その1)『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第27回 | ニュース屋台村

一つの道をひたすら突き進む-地域再生への提言(その1)
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第27回

8月 22日 2014年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

バンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住16年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

バンコック銀行は、日本の金融機関27行と業務提携契約を結んでいる。こうした提携金融機関との協力関係に基づき、私は年に2回これらの銀行を訪問し、顧客訪問、顧客向けセミナーを行っている。こうした日本各地の訪問は既に10年になろうとしているが、いよいよ深刻化していると思われるのが、地方経済の衰退である。

札幌、仙台、金沢、名古屋、広島、福岡など一部の地方中核都市では人口増加の傾向が見られるが、近隣の土地からの人口流入の結果であり、その地域全体としては人口減少、経済縮小に直面している。政府や地方自治体もこうした事態に危機感を持ち、ここ数年何らかの手を打とうとしているが、「相も変わらず補助金頼みの農業振興や特産物の売り込み、観光誘致」としか私の眼には映らない。今回は、私が考える地域再生案について、大胆に提言をしてみたい。

◆若い女性が定着する環境づくりを

まず私が最初に考えたいのは、「若い女性が定着する環境づくり」である。日本の地域振興策の現状は、各地域でのパイの奪い合い施策である。パイ全体を大きくするためには最低でも人口維持が必須であり、出産適齢期の女性(15~39歳)の存在がきわめて重要である。

しかし、こうした出産適齢期の女性が地方部から都市へと流出し、更に悪いことに「都市貧民化」して出産自体をあきらめていくのである。ではなぜ、地方都市から出産適齢期の女性が流出していくのであろうか? その理由として考えられるのは、①地方には十分な就職先がない②赤ちゃんの育児を含めた教育環境の不整備――などである。

こうした点を整備すれば、まず地方の人口減少を食いとめることが出来ると考えられる。女性に職についてもらうためには、その地方に基幹産業を育成するしかない。「そんなことは言われなくてもわかっている。既に何度も産業誘致を図ってきたが、地方衰退に歯どめがかからないのが実情だ」とおっしゃる方も多いだろう。

残念ながら、日本には世界で通用するような産業はごくわずかしか残っていないし、それらの産業はすでに世界展開しており、今更日本に戻ってくることは考えられない。

従来型の産業誘致による産業振興はあきらめた方が良い。一から産業を育成していく覚悟が必要だ。IT、医療、ロボット、ファッション、金融、高齢者介護。何でも良い。もちろん、観光でも構わない。とにかく一つだけ選ぶことである。「何でもやる」というのは「何もやらない」と同義語である。一つを選択して徹底的にその道を歩むのである。そのやり方は以下のものとなろう。

◆インフラ整備、規制緩和、産学連携

第1に、行政はその選択した産業のために、インフラ整備と徹底した規制緩和に動くのである。特定産業への無償工業団地の供給でも良いし、無用の長物と化してしまった市庁舎や公民館の無料開放でも良い。

現に台湾当局などはIT産業のための工業団地の開発・提供を積極的に行っている。また、特定産業育成のためには過剰保護となっている規制を緩和し、世界と競争条件を同一にする必要がある。安易な補助金施策は一切やめるくらいの覚悟が必要である。補助金施策をやめれば地方行政に携わる人々も自らが考え自らが動かざるを得なくなる。その方がよほど生産的である。

第2に、地方大学との産学連携が必要となる。その地方の大学は、選択した基幹産業にかかわる学問を重点的に取り扱い、産業での共同研究を積極的に行っていく。特定産業に関わるノウハウを産業と大学が共同してその地方に蓄積していくのである。これらによって大学のレベルもあがっていくことを期待したい。

もちろん、アジア、中東などの優秀な学生を積極的に受け入れると共に、大学生たちもどんどんインターンとして、海外に送り出すことである。海外に適応する人材を地方で育てるのである。

◆ベンチャーキャピタルの創造、住民の理解と支持

第3に、地方銀行が中心となってベンチャーキャピタルを創造することである。このベンチャーキャピタルは銀行自身が資金を供給するのではなく、その地方の資産家から資金を募り、将来有望と思われる企業を支援していくのである。

地方銀行は将来性のある企業の目利きが要求されると共に、地方の資産家への説明責任を請け負う。地方もしくは中央政府は当然のことながら、ベンチャーキャピタルへの設立について税制上の恩典を付与する。新たな産業育成に対して、金融も側面支援をするのである。

第4に、住民全体の理解と支持をとりつける必要がある。ファッションで有名なイタリアのミラノなどでは老若男女を問わず、住民がこぞって流行の洋服を身にまとい、宣伝を行っている。

また、観光地として有名な大分県由布院では、住民が一致団結して暴力団を追い出し、景観規制を制定。その過程では暴力団に随分脅かされたりしたが、住民が暴力団への土地売却を拒み、パチンコ店を閉店に追いやったことなどを聞いている。

それでは、こうした基幹産業育成の試みは誰が行っていくのであろうか? 私は行政職の方々がこうした事業を主導するのは難しいと考えている。産業が産業として根づくためには、永続的な発展と利益の確保が必要である。こうしたことをやっていけるのは、民間の企業家精神を持った人である。

先に例にあげた大分県由布院のケースでは、温泉宿の経営者3人が互いの競争心を乗りこえて手を結び、街の人たちの先頭に立って観光地としての名声を手に入れたのである。

この事例を考えると、地方の基幹産業育成のためには、その土地のやる気のある民間の方たち3~5人を集め、その人たちを中心に施策を打つことが最も現実的ではないだろうか?  こうしたやる気と能力のある人たちを見つけ出し互いに結びつける作業は、個人的には地方銀行に積極的に担っていただきたいと思っている。

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