п»ї アジア訪日観光客から取り組む国際化『浪速からの国際化』第2回 | ニュース屋台村

アジア訪日観光客から取り組む国際化
『浪速からの国際化』第2回

9月 19日 2014年 経済

LINEで送る
Pocket

北見 創(きたみ・そう)

ジェトロ大阪本部に勤務。関西企業の海外進出をサポートしている。横浜生まれで、ヘンな関西弁を得意とする。『アジア主要国のビジネス環境比較』『アジア新興国のビジネス環境比較』(ともにジェトロ)などに執筆。

◆外国人観光客から始める「国際化」

日本政府観光局によると、今年7月の訪日外国人旅行客数は127万人と、単月では過去最高記録を更新した。中国や香港からの旅行客数も単月で過去最高を記録したほか、インドネシアからの観光客数が前年同月比で倍増するなど、東南アジアからの旅行客も増えた。2014年1~7月の累計では前年同期比26.4%増の753万人となった。

関西へ訪れる外国人旅行客も年々増加しており、観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、13年に関西地方に宿泊した外国人旅行客数は728万人と、前年から41.7%増えており、全国の23.3%を占めている。人気なのは大阪府(407万人)、京都府(236万人)で、続く兵庫(48万人)は水をあけられている。

近年、関西企業はアジアで拡大する中間所得層をターゲットとして、輸出や現地法人の設立などの取り組みを強化しているが、観光客を狙うのに書類手続きや設備投資は不要なので、小さな企業でも気軽に始められる「国際化」だ。

◆香港観光客に大人気の奈良寿司学校

今回は一つの事例として、梅守本店(本社・奈良市)を紹介したい。同社の「うめもり寿司学校(Umemori Sushi School)」は、香港を中心に外国人旅行客から評判だ。梅守康之社長は「香港人にとって奈良県の名所といえば、法隆寺、東大寺、寿司(すし)学校と、3番目に挙げられるほど知名度が上っている」とうれしそうに語る。

梅守社長はこれまでに回転寿司を5店舗閉鎖した経験もあり、寿司事業では苦労を重ねてきた。熱心な営業によって寿司弁当が日本航空の機内食に採用されたり、持ち前の発想力でわさび葉寿司を開発したりといった企業努力を重ね、販売を伸ばしてきた。そして、将来の事業として寿司から飛び石を打つこと無く「ものからことへ」と事業の定義を変えていく中、思いついたのが寿司学校だった。

寿司学校では、外国人観光客は寿司を自分で握って食べることが出来る。日本風のハッピを着て、板前の帽子をかぶり、手洗いから握りまでを体験する。握った寿司を食べ終わった後、卒業証書が授与されるのだが、拍手喝采で非常に盛り上がる。

料金は1人あたり2時間で3千円強と手頃だ。予約は午前・午後とも埋まっていることが多く、最大で1回に160人を受け入れたこともある。香港の旅行代理店はツアー後にアンケートをとっているが、寿司学校の顧客満足度は高く、リピーターも多い。

◆言語の障壁を超えるおもてなし

日本政策投資銀行が12年にアジア8地域で行ったアンケート調査によれば、外国人が感じる「日本旅行に対する不安材料」として、中国、香港、タイ、マレーシア、インドネシアでは「言葉が通じるか不安」が上位項目に挙がっている。

しかし、言葉が通じなくても十分に楽しめることが分かれば、再び日本を観光してくれるはずだ。梅守社長は「英会話は得意でない」というが、オーバーなくらいに身振り手振りでコミュニケーションする。

さらに、社長自ら音頭をとったり、サインをしたりといったパフォーマンスをして、積極的に外国人を喜ばせようとしている。こうした社長のスタイルが、うめもり寿司学校の人気の秘訣(ひけつ)なのだろう。

20年までに訪日外国人旅行客数を2千万人に増やすという政府目標がある中で、実際に観光客の満足度を高め、リピーターを増やしている梅守本店のような中小企業の存在は重要な意味をもつ。

日本では気恥ずかしさもあって、外国語での会話も、盛り上げ役になるのも勇気が必要だが、そんな時は奈良の寿司学校に「もてなし方」を学びに行くのも一手かもしれない。

【写真】梅守本店Facebookページより

 
<会社概要>
会社名:株式会社梅守本店
事務所:奈良県奈良市法華寺町221番地
設立:1994(平成6)年2月
資本金:1000万円
従業員数:80人
URL:http://www.umemori.co.jp/
https://ja-jp.facebook.com/umemorihonten

コメント

コメントを残す