古川弘介(ふるかわ・こうすけ)
海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。
◆はじめに―資産からみた階級構造
社会学者の橋本健二著『新・日本の階級社会』を読んで、日本の階級社会化の現状(拙稿第27回)、格差是正のための政治的方法論(第28回)、貧困層救済の経済的・倫理的理由(第29回)について考えてきた。今回は、視点を変えて金融資産による階級構造をみることにする。なぜなら、本書は階級を職業や所得によって分類しており、金融資産にも言及してはいるものの、その金額が実態を反映していないように感じたからだ。日本の階級社会の実像を、より具体的に理解するためには、資産による把握が必要だと思われる。
例えば、橋本の定義による「資本家階級」の金融資産保有額は2312万円であるが、これは「富裕層」のイメージとは程遠い。富裕層といえば少なくとも億単位の金融資産を保有しているはずである。そこで富裕層の資産運用に強みを持つ証券会社の調査レポートに注目した。野村証券系シンクタンクの野村総合研究所(以下NRI)が作成している日本の階層別純金融資産に関するレポート(*注1)がそれであり、長期間同じ基準で、定期的(隔年)に作成されており、時系列比較による傾向分析に適した資料である。今回はこれを参考にしながら、資産による日本の階層構造について考えていきたい。ちなみに、同レポートでは、世帯を単位として純金融資産5億円以上を「超富裕層」としている。超富裕層は8.8万世帯あるので1世帯あたりの平均保有額は10億円である。かなり富裕層のイメージに近づいてきた感じがする。なお、これは純金融資産だけの数字であり、保有不動産を含めればもっと大きな金額となるものと思われる。 記事全文>>

法定外シャローム大学学長、一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括・ケアメディア推進プロジェクト代表)。コミュニケーション基礎研究会代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。
バンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住21年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。
オフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。









