п»ї 「否常識」な知恵を持って戦う 『「否常識」はいかが?』第1回 | ニュース屋台村

「否常識」な知恵を持って戦う
『「否常識」はいかが?』第1回

12月 27日 2016年 経済

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水野誠一(みずの・せいいち)

株式会社IMA代表取締役。ソシアルプロデューサー。慶応義塾大学経済学部卒業。西武百貨店社長、慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授を経て1995年参議院議員、同年、(株)インスティテュート・オブ・マーケティング・アーキテクチュア(略称:IMA)設立、代表取締役就任。ほかにバルス、オリコン、エクスコムグローバル、UNIなどの社外取締役を務める。また、日本デザイン機構会長、一般社団法人日本文化デザインフォーラム理事長としての活動を通し日本のデザイン界への啓蒙を進める一方で一般社団法人Think the Earth理事長として広義の環境問題と取り組んでいる。『否常識のススメ』(ライフデザインブックス)など著書多数。

「非常識」な世界に対抗するには、我々は「否常識」な知恵を持って戦うしかない。

2015年、私が西武百貨店代表取締役を辞任してから20周年を記念して『否常識のススメ』という本を上梓した。

その間、慶應義塾大学の総合政策学部の特別招聘(しょうへい)教授としてソーシャルマーケティング、「新党さきがけ」の参議院議員、「Think the Earth」や「日本文化デザインフォーラム」など一般社団法人の理事長を歴任してきた。

つまり、政治、経済、社会の3分野にわたって、「産・政・学」それぞれの立場から、エコノミーとエコロジーの関係を考えてきたことになる。例えば、20世紀的な考え方では、エコノミー(経済成長)を追求すると反エコロジー(環境負荷増大)が起こり、エコロジーを重視すると反エコノミー(経済効率低下)が起こるというのが「常識」だったが、今ではエコロジー(環境)への投資を先行させる企業は、エコノミー(収益)でも大きな効果を上げることがわかってきた。つまり、二酸化炭素の排出量抑制など環境技術をいち早く開発した企業は、ビジネスでも優位な位置に立てるということだ。

「これが20世紀と21世紀の意識の違いではないか?」その気づきから、20世紀の「常識」をいったんリセットする「否常識」という言葉を思いついたのだ。

◆他人がやらないことを目指す

私は、西武時代から常識的なビジネスをやっていては、絶対に成功しないと信じていた。

他人がやらないことを目指す。これが後発の百貨店である西武、いや堤清二の哲学でもあったからだ。

20世紀のマーケティングに、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)が提唱した「イノベーター理論」(注1)というものがある。商品購入の態度を新商品購入の早い順に五つに分類すると、一番早いのが、イノベーター(革新者)で全体の2.5%。次がアーリーアダプター(初期採用者/オピニオンリーダー)で全体の13.5%。次がアーリーマジョリティー(前期追従者/ブリッジピープル)で34.0%。次がレイトマジョリティー(後期追従者/フォロワーズ)で34.0%。最後がラガード(遅滞者)で16.0%ということになる。

ヒットする新商品が出た場合、大概の百貨店は市場の動静を見て、70%近いボリュームゾーンを占めるアーリーマジョリティーとレイトマジョリティーを狙おうとするが、この段階になると、猫も杓子(しゃくし)も参入するため、市場はヒートアップして、結果レイトマジュリティーしか捉えられず、どこでも売っているモノは便利で安い店でしか買おうとしないことになり、値崩れさえ始まる。したがってイノベーターから始め、せめてアーリーアダプターの段階で展開できれば、ブルーオーシャン(注2)の市場で、アーリーマジィリティーまでを惹(ひ)きつけることができるわけだ。

だが大半の百貨店は、どこもそれをしなかった。2.5%しかいない市場でリスクを張るということは、百貨店にとって「非常識」だと思われていたからだ。だが西武はそれを「非常識」と捉えず、恐れずに「否常識」に挑戦してきた結果、大きな成長を遂げることができたのだ。

つまり、「人並み」が好きで「みんなで渡れば怖くない」精神の日本人にとって、他人がいまだやってないことを始めることは、リスクが大きいと思うわけだ。だが大型百貨店、あるいは大流通グループといえども、全消費市場の1%を占めているところは皆無なわけで、イノベーターの段階で適切な情報発信さえできれば、その後レイトマジョリティーに至るまでの市場優位性を保つことも可能なのだ。

◆「常識否定」=「否常識」のスタンス

いささか場違いなマーケティングの話を長々としたが、この「常識否定」=「否常識」のスタンスは経済領域だけの話ではない。政治や社会全般にも通じる。さらに、「否常識」をもって否定すべきなのは「常識」だけではなく、世にはびこる「非常識」も同様なのだ。

これに気づいたのは21世紀になって、どうも世界の出来事には呆れるような「非常識」が隠されているのではないかという疑惑からだ。

きっかけは「911」だった。

2011年9月11日、いきなり米国各地で同時多発テロが起きたが、これほど大規模な劇場型テロだけでも十分に「常識」を覆すものだ。だがそれだけではない。このテロ自体、アルカイダが米国に対して仕掛けた挑発だと見るのが「20世紀的コンテキスト」=「常識」だが、どうもその背後には、アルカイダと米国の共謀があったのでは?という疑惑が出てきた。

こう言うと、「あなたは陰謀論者か?」とバカにされそうだが、世界貿易センターの所有者が事件の直前に代わり、建て直しも検討されていたこの老朽化したビルに新たに莫大な保険が掛けられたことや、事故前にアメリカン航空の株がかなりの額、空売りされていたことなど、その疑惑の種子はいくらでもある。

その後、強引な言いがかりでイラクのフセイン大統領を粛清して当初の目的を果たすと、テロの首謀者とされていたオサマ・ビンラディンを殺害するまで、無理矢理な口封じ工作が続いた。これを機に、シリア問題をめぐってアルカイダの後釜ともいえる過激派組織「イスラム国」が跋扈(ばっこ)するようになるが、当初はシリアのアサド政権打倒のために、彼らに武器と資金を与えていたのは米国だったという疑惑も露呈し、一連の関連性を裏付ける。

目的は、グローバリズムと民主化いう美名に隠れて、独裁政権たたきの後に、新たな経済的支配を推し進めようとする、共通の利権を持つ者同士の結託なのではないかといわれる。
だが一方で、この世界制覇のためのなり振り構わぬ「非常識」に対して、「否常識」的な反対の火の手が上がりつつあることも事実だ。

英国のEU(欧州連合)離脱問題も、常識的にいえば、グローバリゼーションの流れにさおさす「非常識」な行動に見える。 だが、崩壊に向かうEUからの離脱は、「否常識」な正解なのかもしれない。

そして直近で注目すべきなのが、米国大統領選挙で、グローバリズムに否定的なトランプが勝利したことだろう。

自由貿易の美名の下、約600社の多国籍企業の利権まみれのTPP(環太平洋経済連携協定)からの脱退宣言がそれを象徴する。

これについては、稿を改めて考えてみたい。

そしてこれらの国家機密が、白日の下にさらされるようになったのは、「ウィキリークス」のアサンジュや、元CIAのスノーデンの功績だということも忘れてはならない。彼らの「否常識」な活動についてもいずれ触れてみたい。

「非常識」な世界に対抗するには、我々は「否常識」な知恵を持って戦うしかないのだろう。

(注1)
http://www.jmrlsi.co.jp/knowledge/yougo/my02/my0219.html

(注2)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E6%88%A6%E7%95%A5

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