バンコク週報
１９７６年１０月創刊のタイで発行する日本語新聞。在タイビジネスマンに向けてタイの政治・経済・社会ニュースから人物紹介まで多彩なコンテンツを提供している。
◆空調・給排水衛生設備の設計・施工
空調・給排水衛生設備の設計・施工を行う１９４６年創業の三建設備工業社（本社・東京都中央区）。２０１３年12月、タイに進出し、現地大手ゼネコンＥＭＣパブリック社との合弁で設備工事を中心に建設全般を取り扱うＳＡＮＫＥＮ―ＥＭＣ社を立ち上げた。
三建設備工業が海外展開を検討し始めたのは進出前年の12年。長年、日本国内だけで事業を展開してきたが、東京オリンピックまでは建設需要が望めるものの、その後市場は縮小に向かうと予測。より広い範囲で市場を捉える必要があると考えた。
そこで、インフラが充実し社会も成熟しているタイ、インドネシア、マレーシアに絞り、３カ国並行 で合弁先を探すことにする。建設業は現地にパートナーがいないと人材確保など事業運営が難しく、それだけに合弁先選びには慎重を期す。結局、タイで理想的な合弁相手が見つかることになるが、それが日系企業との提携を模索していたＥＭＣパブリック社だった。同社幹部は日系企業勤務経験のある親日家であり、さらに三建設備工業と同様、空調・衛生工事を得意としていることから、合弁話はトントン拍子に進んだ。
◆医療・福祉関係工事受注に意欲
「通常別々の会社が請け負う空調工事と給排水衛生工事であるが、三建設備工業ではそれを一括で受注できる」。同社の松井栄一社長は自社の強みをそう説明する。同一会社が設備全般を設計したほうが設備の密度が高まるうえ、管理費のコストダウンも可能となる。この強みが特に生かされるのが総合病院工事という。このため、大型病院工事の受注実績は日本でトップクラスだ。そしてこれはタイ合弁会社の強みでもある。
東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）域内各国も今後確実に高齢化が進んでいく。「タイでは工場設備が中心だが、今後は医療・福祉関係の仕事が増えていくのではないか。その時こそ当社の強みが十分に発揮できることになる」と話す松井社長だ。
◆今年の受注目標はローカル６、日系４
三建設備工業のタイ進出は日系の同業種では最後発グループに入る。そのため、他社と差別化を図るため公共工事を含めたローカル市場をメインターゲットにしようと考えた。先行している設備工事会社はタイに工場を建設するメーカーとともに進出しているため、日系企業の市場だけで勝負をするのは難しいと判断したからだ。
ただ、日本品質・ローカルコストが好感され、今のところ日系企業からの改修工事が事業の中心となっている。それでも、今年の受注目標としては、ローカル６割、日系４割、新規受注10億バーツを掲げる。
現在、日本人スタッフが日系企業、タイ人スタッフはローカル企業を営業。日本人は１人常駐 しているが、事業拡大にあわせて増員していく計画だ。
なお、同社にとって初の海外企業との合弁ということもあり、意思の疎通を欠くことがあったようだ。「遠慮や思い込みでかみ合わなかった部分もあったが、今年は本音で話ができるようになった」（松井社長）という。
◆合弁でのＡＳＥＡＮ進出も視野
タイへの進出を決めたもうひとつの理由として、ＡＳＥＡＮ経済統合が進む中、タイがＡＳＥＡＮでの事業展開の拠点に最適との判断も働いた。昨年８月にはインドネシアで現地設備会社と技術提携を結び、人材交流を図るとともに、同国の日系企業に対するアプローチも進めている。
一方、タイ側合弁会社であるＥＭＣパブリックもタイ周辺国、特にミャンマーでの事業に強い関心を示しているという。このため今では三建設備工業側もＳＡＮＫＥＮ―ＥＭＣとしてのミャンマー進出に関心を抱くようになった。日タイ合弁企業がＡＳＥＡＮ周辺国へと進出するケースはタイ投資委員会（ＢＯＩ）がひとつのモデルとして掲げる投資形態でもある。同社のＡＳＥＡＮ展開が注目される。
現場を重視する三建設備の松井社長（右）と
クリサナEMCパブリック上級副社長
日本での施工例
1.大塚製薬工場・釧路工場（北海道）
2.江南厚生病院（愛知県）
SANKEN-EMC Co., Ltd.
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