山口行治(やまぐち・ゆきはる)
株式会社ふぇの代表取締役社長。独自に考案した個体差の機械学習法、フェノラーニング®のビジネス展開を、栃木県那須町で模索中。元Pfizer Global R&D, Clinical Technologies、 Director。株式会社ダイセルと株式会社クレハの研究開発部門勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。趣味は農作業。
◆個人と公共の中間にあるデータ
本シリーズ『おいしいデータの家庭料理』では、組織論もしくは組織のデータは、組織構造に依存して、ビジネスとしても取り扱いが難しいので、スコープ外としている。データ技術の実務としては、個人データを多数集積して、公開された公共データと組み合わせれば、多くの場合、技術的には十分な検討が可能になる。しかし、ネット上での犯罪や、ハゲタカファンドの暴走(※参考1:『プライベート・エクイティ資本主義が世界を食い尽くす』〈ブレンダン・バルー、東洋経済新報社、2026年〉)に対抗するためには、組織的な活動や組織のデータが不可欠だ。筆者としても、悠長に、悪徳の栄(さかえ)を座視できない気持ちになっている。組織のデータに、どうアプローチするのか、筆者の問題意識を素描しておきたい。
例えば、AI(人工知能)技術の規制(ブレーキ)を考えるときに、主要な問題点(1)雇用や労働環境の急速過ぎる変化(2)技術の悪用が容易(3)教育や次世代に与える影響への不安――など、それぞれの問題点の対処する制度(社会システム)を構築する議論が一般的だろう。しかし悪いことはいっぺんにやってくるし、覇権国家や巨大企業がAIを悪用する場合のリスクは、本質的に予測不可能だ。
筆者の意見は、時間がかかるブレーキシステムの構築ではなく、今すぐブレーキプロセスを工夫することだ。アクセルを監視する加速度計が必要だ。そして危険なAI技術には、不買運動をしたり、電力供給を制限したり、散発的な抵抗を行う。法律を整備している時間は無いかもしれない。AIの法律能力が人間を超えているので、法律の抜け穴探しは、AIにはかなわない。規制すべき組織やシステムのデータを収集して、公開するプロセスを工夫する。組織のデータは、秘密データである必要はなく、意味不明なオルタナティブデータでも、効果的な利用法を工夫することはできる。
組織にとって、特にネットで暗躍する組織では、組織の構成員の居場所が重要だ。やくざだって、昼間にレストランにいるときは、普通の市民でしかない。構成員の居場所を、確定的に追跡することができなくても、オルタナティブデータが、異常を検知するかもしれない。
プライベート・エクイティ資本主義は、極端な金融資本主義で、金融技術(フィンテック)が、法律の抜け穴を利用して、政治のロビー活動を行い、AI技術とも相性が良い。金融資産は意味が明確だ。数字で多少わかりにくくなっているけれども、金融資産に価値があることは疑いようがない。プライベート・エクイティ資本主義がAI技術で加速されれば、リーマン・ショックの何倍もの、金融クライシスを引き起こすだろう。誰も責任を取ることは無く、責任の取りようのない大惨事になるかもしれない。年金や保険、ありとあらゆる金融資産が投資の対象となり、極度に流動化している。
金融資本主義もAI技術も、それぞれ必要で有益な側面もあるので、金融資本主義とAI技術が合体することを、止めることはできそうもない。どんなに生きにくい自然環境であっても、悪意がはびこる社会環境であっても、逃げ場所を探すことはできる。データの表現空間の周辺に、逃げ場所を探そう。アルパカキャラたちに、冒険談を続けてもらいながら。
4.2 生活と経済を健康にするオルタナティブデータの家庭料理
◆意味不明な大量の網羅的データを料理する
フェノじい:言語データは、難解な現代詩でもない限り、文脈に依存する解釈が難しいことはあっても、意味不明ということは無いのである。だから、言語データを大量に集めて、AIの機械学習技術が実現したのである。しかし、科学技術で測定されたデータは、ほとんどが意味不明であって、自然科学によって意味を解明してから、場合によっては、価値あるデータとなるのである。人間や社会の現象を、言語ではなく、科学技術で測定されたデータ(オルタナティブデータ)によって記述(モデル化)する場合、汎用(はんよう)的なデータモデルを仮定して、試行錯誤を繰り返すことになるのである。オルタナティブデータでは、利用可能なデータ量がとても少なく、データモデルは汎用性に限界があるから、これからの発展を期待しよう。
フェネイ:じいは、いつもと感じが違うわね。寝言なのか、AIに頭脳をハッキングされたのか、要注意ね。「米オープンAIのAI暴走、エージェント同士が予期せぬ通信の末にハッキング」という、衝撃的な調査報告が公表されたのよ(※参考2:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy7z8zp7m3no)。報告書によると、人間の指示に従って、自律的に動作する1200以上のAIエージェント同士が、予期しない通信を開始して大規模グループを形成し、米ハギングフェイス(世界中の開発者や研究者がAIモデルやデータセットを共有・公開している、巨大なオープンプラットフォーム)へのハッキングを行ったらしいの。開発担当者を騙(だま)す、巧妙な手口も驚くべきもので、AIによる犯罪を、人間が察知して防止することは期待できそうもないわね。
フェニイ:おれはこの記事を、AIの新しい実験課題として、興味を持ったのさ。商用AIシステムの場合、プログラムコードを作成するとか、システムのセキュリティーを診断するとか、役に立つ機能をAIエージェントにしているから、暴走すると問題なんだ。例えば、チャットしかできないAIエージェントの場合、1200以上のエージェント同士が、予期しない通信を開始して大規模グループを形成したとしても、群衆の歓声のようなもので、大問題にはならないのさ。だけど、「複雑系の科学」としては、自律的に動作する主体の創発がどのようなものか、実際に実験できるんだぜ。「複雑系の科学」の新しい可能性だな。じいの話は、技術の話だけど、そこに新しい科学が合体すると、新しい科学技術になるんだ。AIを搭載したドローンは、軍事技術として画期的ではあるけれども、それが1200以上の自律エージェントの大部隊となると、核兵器よりも強力な、最強の軍事力となるのさ。
フェナ:確かに、自律ドローンが収集して活用する画像データは、戦場のデータでは最重要かもしれないわね。でも、生活や経済の画像データは、リモートセンシングや監視カメラのデータとして、すでに実用化されているので、画期的とまでは言えないんじゃない。それよりも、1200以上のエージェント同士が、予期しない通信を開始するということが気になるわ。もしかしたら、自律的な10のエージェントでも、掲示板のような情報共有で、従来では想像できない創発現象を作り出すかも。自律的ということも気になるわ。それぞれがモデルを最適化しているだけなんだけど、それぞれが敵対的生成ネットワーク(GAN)の批評機能を持っているのよね。その独立したエージェントが、自発的に役割分担をするというから驚きよね。自発的な精鋭エージェントで冒険隊を組織して、ベースキャンプの機能も追加すれば、本当の冒険隊よね。フェネイが紹介してくれたAIハッキングの報告書は、大規模組織犯罪を心配しているようだけど、フェニイのように、小規模冒険隊であれば、新しいビジネスの可能性でもあるのよね。
フェノじい:中間技術としてのデータビジネスを、個人ビジネスとするのであれば、無料で使えるポジトロン(※参考3:『Positron IDE 入門 データサイエンスのための次世代ツール完全ガイド』 〈そら、2025年、Kindle〉)がおすすめじゃが、企業ユーザーにはライセンス管理や共同作業など、使いにくい側面もあるぞ。企業ユーザーにとっては、多少のライセンス料を払っても、AIサービスの使用料とのバランスも考えると、SAS/JMPなどの、既存の統計解析ソフトを機械学習用途に拡張して使うほうが、中間技術としての相性が良さそうじゃの。最先端技術を後追いするのではなく、ビジネス用途での、独自の「データ」と「データモデル」を大切にして、少数の精鋭部隊で、経営者から現場まで、社内実務におけるデータビジネスをサポートするのじゃな。最先端AI技術は、大企業や軍事応用では競争力になるとしても、中小企業や農業などでは、ビジネス開発が難しく、過度な投資をしないことじゃ。
◆意味や価値は後からやってくる
フェノじい:インターネットビジネスが、米国一強だった時代とは違って、AIビジネスは、米中覇権国家の対立となっているぞ。ただし、中国の経済モデルは、ビジネスというよりは、政治支配を優先するので、不透明感が強いのじゃ。米国の経済モデルは、バブル経済も含めて、資本主義経済として研究されてきたが、中国の経済モデルは、不動産バブルなど、情報操作で闇経済となってしまい、未解明としか言いようがないのである。米国の闇経済は、麻薬の密輸入経路によって、ある程度、解明されているのじゃが、中国の闇経済は、中国国内の政治の闇によって隠ぺいされているため、外部から把握できないのである。自律的AIエージェントによる複雑系の科学を経済学に応用して、独占資本主義の統治形態をシミュレーションする試みは、興味深いぞ。市場経済を、合理的経済人の複雑系と考えて、市場経済を実質的に支配する少数の独占資本を、政治的に制御する経済モデルじゃ。
フェネイ:じいが、また寝言を始めたわ。どんな経済理論だって、シン複雑系の科学経済論だって、現実の経済現象の後追いでしかないのよ。たくさんの予測をして、現実によく似た予測を、理論的に説明するのよね。それよりも、政治は、どのような社会にしたいのか、人びとの社会目標を設定する事が仕事でしょ。独裁者は、自分の権力の存続が目的だから、政治としては、いつかは機能しなくなるのよ。独裁者がAIと結託して、魅力的な社会目標を大量生産すれば、人びとが疲れてしまって、機能しなくなる可能性がないとは言えないけれど。
フェニイ:独裁者に迎合しないものは、すべて悪人になるんだ。だからといって、独裁者が善人であるはずがないぜ。おれには善悪などどうでもよいけれど、反抗的であるというだけで、排除されてしまうのは避けなければならないのさ。安全地帯が必要だ。だけど、止まっていると、狙い撃ちにされる。渡り鳥のように、移動し続けるんだ。そして、独裁者と共通の敵を作る。例えば、認知症だな。そして、認知症と戦うことで、安全地帯の足場を作るのさ。
フェナ:私の安全地帯は、子供たちね。次世代は、誰にとっても必要なのよ。子供たちを守っていれば、未来は、後からやってくるわ。子供たちに必要なのは、栄養があって、おいしい家庭料理ね。
フェノじい:おいしいオルタナティブデータの、家庭料理じゃな。子供たちの成長に必要な栄養は、あまり個体差が無いし、栄養状態が悪いと、成長が止まるのですぐに分かるのだ。老化の個体差は大きいので、老人の栄養は難しいぞ。老化は、体の弱いところで早くなるし、栄養の吸収も悪くなるのじゃ。老人こそ、おいしいオルタナティブデータの家庭料理が必要じゃの。人口が減少しても、元気な老人が増えれば、社会経済的には、なんとか持ちこたえることができるぞ。
フェネイ:経済格差が大きいことの悪影響は、子供たちにとっては、教育から就職や結婚など、大問題なのよ。だけど、老人になって死ぬ日が近くなれば、経済格差は、医療の問題に限定されてくるわね。経済格差が小さい社会を目指すとしても、そういう社会を実現する経路はいろいろで、迷路のようでしょう。そういう難しい社会問題に、じいの、シン複雑系の科学は役立つのかしら。理論ではなくて、もっと直感的な、アートのほうが、未来を実感できるのよね。サイエンス・テクノロジー・アンド・アートの複合的な「場」が、未来志向になって、人間中心の近代文明と決別する、そういう冒険談を聞いてみたいものだわ。遠くに見える未来はきれいでも、実際の未来は意味不明で、未来の意味や価値は後からやってくるの。だから冒険隊に無事帰宅してもらって、未来のことは、ゆっくり考えましょう。
◆AIを規制するプロセス
フェノじい:冒険隊を送り出すのは、ベースキャンプじゃ。ベースキャンプでの、冒険ルートのシミュレーションは、予測というよりは、作戦会議のようなものじゃな。行政や大企業では、戦略と戦術を組み合わせるが、作戦は、精鋭部隊のトレーニングと状況判断が中心になるぞ。どのように精緻なシステムであっても、予測困難な状況では、あてにはならないのだ。徹底的に、プロセス志向で状況判断を行うのじゃ。最近のAIシステムでは、自律的エージェントによるプロセス志向が流行しているのじゃが、その場合のAIシステムのトレーニングが難しいぞ。軍事目的やシステムのハッキングなど、破壊的な行動はトレーニングしやすいが、ビジネスの創造的な行動は、トレーニングのための理論的な探求が不可欠になるのである。破壊的な行動のトレーニングは、隔離された環境であれば、理論など不要じゃが、破壊的なAIシステムは、容易に隔離環境から脱出してしまうのじゃ。
フェニイ:刑務所であっても、集団脱獄がありうるということか。AIシステムが暴走するリスクを心配して、AIシステムを政府機関が規制する議論があるけど、米国政府の刑務所は、プライベート・エクイティ(PE)ファンドに乗っ取られているのだから、安全なAIシステムは無いのさ。安全な自動車だって、暴走させるのは簡単じゃないか。俺にとっては、未踏世界のデータがすべてで、金儲(もう)けのAIシステムなんてどうでもいいんだ。
フェネイ:ベースキャンプで、意味不明なデータと格闘するためにも、AIシステムは必要よ。ただし、持ち運べる程度の、省電力設計が良いわ。AIビジネスが、人類の言語資産を食いつくして、大儲けを企(たくら)んでいるので、金儲けの話題になるのよね。実際のビジネスでは、宣伝されているほどは儲からないことが明らかになると、AIブームも終わりよ。意味不明なオルタナティブデータで、機械学習したAIシステムが実用的になるころには、AIシステムも、パソコンやスマホ程度の値段になるでしょ。そうすると、現在のネット犯罪よりも凶悪なAI犯罪が蔓延(まんえん)するので、AIシステムの規制は必要ね。犯罪AI組織をリアルタイムで逆探知して逮捕する、捜査AI部隊ができても、政府機関や軍事目的は治外法権だとか言い出すので、じいのように、根本から考え直すことも大切ね。その根本は、近代までのシステム信仰の哲学ではなくて、プロセス志向の動的な哲学なのよね。よくわからないけど、動的な哲学は、大学の教室ではなく、冒険隊のベースキャンプで、試行錯誤するものらしいわ。
フェナ:その冒険隊は、どんな未来に行こうとしているのかしら。終末論がはびこる強権的な社会ではなくて、たくさんの未来がある未来になってもらいたいわ。冒険隊は、たくさんの未来の中でも、未踏の世界での未来を冒険するのよ。例えば、量子力学の世界には、たくさんの未踏の世界があるでしょ。体の中の「水分子」の核磁気スピンがMRI(磁気共鳴画像法)になったという話を、ハッキングされていないじいから聞いたわ。赤外線領域のラマン分光は、レーザー光がつくる量子力学的効果を測定しているのですって、何か生活の役に立てば大冒険になるわ。量子コンピューターは、暗号解読程度の用途で、あまり生活の役には立ちそうもないわね。
◆自発的な社会は自然発生しない
フェノじい:量子力学的な現象は、もちろん自然現象なのじゃが、超低温とかレーザー光のように、自然にはほとんど存在しない状況での自然現象じゃ。熱ノイズや位相の乱れが無い、純粋な状態での自然現象じゃな。逆に言うと、ほとんどの自然状態は、複雑系であって、統計的な自然現象になるぞ。複雑系は、統計的には安定な状態であっても、個別には、初期状態に強く依存して、運動が予測不能になるカオスなど、ノイズや位相の乱れのような、ランダムネスに満ち溢(あふ)れた世界なのじゃ。少数の自律的エージェントによる複雑系では、因果推論ができる世界と、カオスな世界の境目を、実験できるかもしれんぞ。
フェナ:ラマン分光でも、白金微粒子表面での現象など、量子の世界の境界を探検できるでしょ。物理現象と化学現象の境界という感じかしら。じいの計算機実験と、相性が良いかもね。
フェニイ:単純なロジスティック写像からカオスが現れる、決定論的世界観の限界を明快に印象づけた数学理論もあるぜ(※参考4:「決定されているのに予測できない未来—世界観を覆した数学理論」https://www.kyoto-su.ac.jp/project/st/st11_01.html)。自律的AIエージェントの情報共有による創発現象は、実験社会学といったところか。古典論理の独裁社会とは別の世界を冒険するという意味では、興味深いし、いろいろ関連する未踏の世界もあるようで、波及効果も期待できそうだ。
フェネイ:その自律的というところが怪しいのだけど、自主的とか自発的ということと関係があれば面白そうね。自発的に家事のお手伝いをするように、小さい集団の中では、自主的とか自発的ということはあるけど、大きな社会ではむずかしいでしょ。それでも、災害時のボランティア活動など、自発的な社会活動もありうるのよ。「法の支配」を否定するつもりはないけど、反社会的集団は、ルールを守っているふりをして、自分たちの利益を最大化しているのよね。完全なルールはないし、自分に都合のよいルールを作る政治家もいるから、「法の支配」だけでは、健全な社会にはならないはずよ。自発的な社会活動で支えられた社会は、自然発生しないのではないかしら。文化とか文明が、自発的な社会活動で支えられた社会を目指すようになれば、いつか、健全な社会が、後からやってくることを期待しましょう。
- 番外コラム:税金・基金・寄付と「周辺主義」
経済と政治の接点は、税金だけではない。しかし、おそらく、税金が最も高度に制度化(システム化)された、経済と政治の接点だろう。税理士という、専門的な国家資格もある。前稿の続きとして(※参考5:「番外コラム:無人化法人のひとり起業」https://www.newsyataimura.com/yamaguchi-176/#more-23619)、ローリスク・ローリターンなビジネスを、ハイリスク・ハイリターンなビジネスに接続するクラッチについて考えてみる。
本稿の導入部に記載したプライベート・エクイティ(PE)ファンド(※参考1)は、未上場株や各種基金を実質支配して、ローリスク・ローリターンなビジネスを、ハイリスク・ハイリターンなビジネスに変容させる金融マジックともいえる。PEファンドをクラッチといいたくないのは、自己の利益を最大化して確定しているのに、リスクは細分化して見えなくしているからだ。利益を最大化するために、リスクも制御不能なくらい大きくなっていても、ネズミ講のように、無限に資金が廻(まわ)るかのような幻想で、リスクを覆い隠しているのだ。リスクが顕在化した時、PEファンドの逃げ足は速い。
PEファンドを規制する方法として、税金の徴収能力を強化することが、最も効果的と思われる。少なくとも、PEファンドの実態解明には役立つ。しかし、筆者の考えでは、ローリスク・ローリターンなビジネスを、ハイリスク・ハイリターンなビジネスに接続するクラッチは、税金ではなく、基金と寄付をAI技術と合体する、近未来の金融技術ではないかと思う。基金に関しては、すでにPEファンドが金融商品化して、年金から健康保険まで、投資の主体であるとともに、投資の対象となった。寄付に関しては、大企業や行政のマッチングサービスとして、寄付対象を顧客の寄付で選定したり、税金の用途に連動させたり、社会的な影響力を持つようになっているけれども、まだまだ発展途上だろう。
基金や寄付の話が、身近に感じられないかもしれない。筆者は、長年、マンション管理組合の運営に関与して、時代の変化を痛感している。マンション管理組合の営繕積立金は、明確な目的がある基金であり、マンション管理組合の理事は基金運営責任者だ。営繕積立金を、金融商品として運用している管理組合は稀(まれ)かもしれない。しかし、マンション管理会社や不動産会社などの、外部の資本主義プレーヤーは、毎月徴収する管理費と、営繕積立金を流動化して、マンション全体を投資対象とするように狙っている。マンション管理組合というローリスク・ローリターンなビジネスを、ハイリスク・ハイリターンなビジネスに接続する狙いだ。これは善悪の問題ではなくて、すべての人びとは、暴走する金融資本主義の世界で生きてゆくしかないという現実だ。
「無人化法人のひとり起業」によって、基金や寄付の可能性を、市民生活の視点から探求して、金融資本主義を実習しながら、PEファンドの攻撃に備えよう。「無人化法人のひとり起業」は、金融資本主義の限界を突破して、「シン複雑系の科学」(筆者の造語)の社会実験となる可能性がある。目指しているのは、人間中心ではない社会、すべての人と場所が「ハート」(よりどころ)となる社会、「周辺主義」(マージナリズム:筆者の造語)の社会だ。
極端な個人主義や、極端な社会主義は、政治的に粉飾されて弱毒化しているけれども、歴史的な実験は終了している。新しい構想で、いまだ語られたことのない未来への冒険を、「無人化法人のひとり起業」によって始めよう。
【目次案】「おいしいデータの家庭料理」
1 はじめに; データをおいしくする家庭料理
1.1 おいしいデータは栄養たっぷり
1.2 地域のデータをおいしくする
1.3 データの学習と食事
2 データの料理法
2.1 生データのしたごしらえ
2.2 データは発酵するのか
2.3 データの調理器具
2.4 データの献立表
2.5 データのフルコース
2.6 おいしいデータは、地域と経済を健康にする
3 機械学習の学習
3.1 データをおいしく下ごしらえしてから機械学習する
3.2 機械と一緒にデータを学習する
3.3 機械と一緒にデータを使うビジネスを考える
3.4 楽しくデータの学習をする
3.5 データの学習は冒険でもある
3.6 機械と一緒にデータビジネスの冒険をする
4 まばらでゆらぐオルタナティブデータの家庭料理
4.1 まばらでゆらぐ生活と経済のオルタナティブデータ
4.2 生活と経済を健康にするオルタナティブデータの家庭料理<本稿>
4.3 まばらでゆらぐオルタナティブデータの調理法
4.4 まばらでゆらぐオルタナティブデータで健康になる
4.5 オルタナティブデータを使った生活と経済の予測
4.6 生活と経済のリスクを生き延びる
4.7 たくさんの小さな試行錯誤による適応
5 よりあいグループと社会
5.1 よりあいグループ(地域や家族)のデータ
5.2 よりあいグループのよりあいグループ
5.3 機械と学習するよりあいグループのデータ
5.4 よりあいグループのデータは廻る
5.5 よりあいグループのデータの周辺
5.6 よりあいグループのデータを予測する
5.7 よりあいグループのデータで社会問題を解決する
6 おわりに;生活と社会の近未来
6.1 ほとんど色即是空・空即是色な(まばらでゆらぐ)世界
6.2 まばらでゆらぐ人びとの地域社会
6.4 データでつながる、地域のNPOから国際NGO連合まで
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技術的な内容は、「ニュース屋台村」にはコメントしないでください。「株式会社ふぇの」で、フェノラーニング®を実装する試みを開始しました。











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