山口行治(やまぐち・ゆきはる)
株式会社ふぇの代表取締役社長。独自に考案した個体差の機械学習法、フェノラーニング®のビジネス展開を、栃木県那須町で模索中。元Pfizer Global R&D, Clinical Technologies、 Director。株式会社ダイセルと株式会社クレハの研究開発部門勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。趣味は農作業。
◆オルタナティブデータの中間技術と先端技術
本シリーズ『おいしいデータの家庭料理』も折り返し地点になった。ビジネスでおいしいデータは、すでに大企業に独占されているか、中小企業では入手困難と、諦めていないだろうか。諦めるのは、贅沢(ぜいたく)なレストランの料理だけにしておこう。家庭料理や田舎料理もおいしいし、多種多様で、健康的でもある。しかも、データの世界の探検は始まったばかりで、地図がない未知・未踏の世界だ。
最近のAI(人工知能)ブームでは、言語データが攻略されつつある。しかし、「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」(『論理哲学論考』〈ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン〉)のは哲学者だけであって、1秒間に1万回(10キロヘルツ)でも1億回(100メガヘルツ)でも測定できるデジタルデータは、語るスピードが追いつかないとしても、語りうるものと語りうるものの関係を語る、もしくは語りえないものと語りえないものの関係を表現する、日常世界(例えばスマホ)のデータだ。
歴史的時間を費やして蓄積された文字言語データは、ほとんどがAIに爆食された。現在は、AIが作成する文字言語データが増殖して、人間の文字言語データが希薄になっている。音声言語データは、AIによって文字言語データ(または文字言語を分解したトークン)に変換され、瞬時に翻訳される。文字言語データとしての法律を、AI利用を前提条件として再定義する必要がある。法の支配が、AIによる支配にならないように、権力者の権力行使を規制するという意味だけれど、この文脈は、明らかに筆者の能力を超えている。筆者としては、言語データ以外のデータの世界に集中しよう。特に、言語データの意味から比較的自由な(関係が薄い)データとして、オルタナティブデータの活用について、その可能性と安全利用の条件を考えてみたい。
生活関連のオルタナティブデータとしては、健康もしくは元気(健康向上)に関連する、非言語の網羅的データを考える。この領域では、個体差をいかに理解するのかという問題が、古典的で未解決の問題だ。古典的な問題なので、データサイエンスの中間技術として取り組んでみよう。先端技術としては、バイオ医薬品や再生医療などが、科学技術の立場から推進されている。これらの先端技術を、経済性の立場から再考して、健康関連の中間技術と比較してみたい。比較というよりは、高価な先端技術製品を、安価な中間技術製品で効率よく使う方法を考えている。
経済関連のオルタナティブデータとしては、経済の地域差に関する、非言語の網羅的データを考える。経済といっても、家庭経済レベルの中間技術(自給自足や教育投資など)の推進に役立つデータサイエンスだ。インターネットのセキュリティーは、大企業やお金持ちには大問題であっても、田舎で簡素な生活をしていれば、最小限のリスク管理で、実用的にインターネットを利用できる。田舎生活では、医療・介護サービスと医療費・介護費が問題になるので、経済関連のオルタナティブデータにおいても、健康関連のオルタナティブデータの土台が大切だ。
オルタナティブデータとしては、物理的データや化学的データなど、ありとあらゆる種類のデータが考えられる。筆者としては化学的データに興味があるけれども、音や画像、体重や体温など、物理的データのほうが取り扱いやすい。当面は、物理的データをイメージしながら、化学的データでは具体例を考えることにしよう。
網羅的なデータとしては、スペクトルデータを想定している。フーリエ変換による周波数空間のスペクトルデータも、物理的データのほうがわかりやすい。スペクトルを広義にとらえれば、化学的データや医学的データでもスペクトルデータもありうる。筆者独自の個体差の表現論における、網羅的データの基本的考え方については、前シリーズ『みんなで機械学習』において、何度か言及したことがある。物理的な意味でのスペクトルの表現論との関係について、新たに考察して、再度整理してみたい。
アルパカキャラたちに、冒険談を続けてもらおう。
4.1 まばらでゆらぐ生活と経済のオルタナティブデータ
◆ホタルの群れをイメージしよう
フェナ:じいの「オルタナティブデータ」の話が、よくわからないのよ。フェネイに質問してみたら、「オルタナティブデータ」はどうでもよいから、「まばらでゆらぐ」データとして、ホタルの群れをイメージすることを教えてもらったの。AのデータとBのデータの関係は、AとBの関係のデータとは別物なのよ。AのデータとBのデータの相関係数は簡単に計算できるけど、AとBの類似性のデータは、類似性が定義される大きな集団の中で、まばらなデータになって、しかも時間とともに揺らぐので、とても難しいのですって。ホタルの群れの中で、2匹のホタルの光を測定すれば、関係が有るのか無いのか、よくわからないでしょ。でも、ホタルの群れの光はまばらでゆらいでいることは確かなのよね。そういう、わけのわからない現象を、科学的な方法で無理やりデータにしたものが「オルタナティブデータ」だから、わけがわからなくて当然ね。私なら、ホタルの群れを見ていれば、気持ちがよくて楽しいし、「オルタナティブデータ」なんて、どうでもいいけどね。
フェニイ:そのホタルの群れが、遠い新大陸だけに生息していて、特別な光り方をするといっても、みんなは信じないだろう。ところが、画像データにして持ち帰れば、大冒険の証拠になるのさ。さらに、ホタルが光る闇のなかに、未知の動物が潜んでいたら、大発見さ。赤外線センサーや赤外線カメラは、闇の中の見えないものを見る「オルタナティブデータ」だな。
フェネイ:新大陸で発見されたのは、未知の動物というよりも、ジャガイモやトウモロコシなどの、先住民が大切にしてきた食糧だったのよ。冒険談は面白いけど、あまり儲(もう)からないのよね。近場の探検ならよいけど、新大陸を発見するような冒険隊となると、冷静な経済計算も必要よね。そもそも、現代では、新大陸の発見なんて期待できないし、どんな冒険をするのかということと、どんなデータを収集するのかということは、あらかじめよく計画しましょう。
フェナ:東日本のゲンジボタルと、西日本のゲンジボタルでは、点滅するスピードが違うという発見をしたホタル研究者は、計画をして探検したのかしら。光るクラゲの研究で、ノーベル賞(2008年)を受賞した下村脩博士だって、冷静な経済計算をして、具体的な研究計画を作成していたとは思うけれども、科学的な発見が、医学関連技術としてノーベル賞になるのだから、現代でも目に見えない新大陸を発見する可能性はあるはずよ。現代の都市生活は、まばらとはいえないし、経済だって、ゆらぐというよりは、予測不能な乱流という感じじゃない。だけど、ネットでの生活はバラバラに分断されて、ネットでの経済は詳細に分析されてコントロールされているでしょう。フェニイが言うように、データの世界の冒険は、現在の延長上の未来ではなく、未来からやってくる大発見が必要なのよ。じいのベースキャンプだって、一つとは限らないし、わからないことばかりね。
◆人口密度は災害リスクのオルタナティブデータ
フェノじい:都市での生活は、刺激的で、政治経済の中枢につながる感覚になるぞ。西欧の城壁都市のように顕著な例も含めて、都市郊外の農村集落を支配下において、権力の繁栄が都市に表現されておる。しかし都市は、戦争のリスクや、自然災害のリスクなど、危険な場所でもあるのじゃ。都市の人口密度は、行政データで、ある程度評価できるけれども、災害リスクとの関係となると、人口密度をどのように定義(計算)するのか、とても難しい問題になるぞ。地域の防災マップでは、感染症リスクまでは考慮できないから、都市の人口密度を推定するオルタナティブデータを出発点にして、都市の災害リスクを再考してみるか。
フェニイ:地域センサーデータの出番だな。人口密度の小さい非都市部が国土の大半だから、まずはある程度以上の人口密度の地域を都市部として、都市部の境界を探すデータを収集するのさ。道路の交通量なども参考になりそうだ。行政データとは違って、都市部の境界は季節変動するかもしれないし、そもそもの人口の定義だって怪しいものさ。
フェネイ:都市の災害リスクには、戦争もあるのでしょ。そうなると、地域センサーデータにとっても、歴史のデータが必要になるのかしら。福井県の年縞博物館(※参考1:https://varve-museum.pref.fukui.lg.jp/)のように、7万年もの歴史が土の成分に残されている例もあるから、地域センサーデータとしては、地域の土壌のデータが重要かもね。
フェニイ:地域の人口密度を、どの程度の時間スケールで見るのかということかな。昼間人口・夜間人口ということも、災害リスクとしては重要さ。行政的には、都市の内部の人口密度を重要視するけれども、まずは、都市部の境界をよく調べて、都市内部は特異点と考えておこう。
フェノじい:細菌やウイルスは、人口密度を「知って」いるのかもしれんの。地域によっては、風土病みたいなものもあるし、調べれば興味深いけれども、奥が深そうじゃ。せめて、土壌データから始めるか。地域の特性を、人口密度との関係でデータ集積することが、地域経済のベースキャンプになりそうじゃ。都市部の境界をよく調べるという、フェニイの提案は、2次元の面積の調査を、1次元の境界の調査に縮約しているので、画期的じゃな。
フェニイ:境界の内側と外側の地点で、同時にデータを収集して比較するのさ。データの差異で、境界の内側と外側に特異的な差異を発見できれば、その差異を使って、境界を再定義するんだ。都市部で大量にエネルギーを消費していたら、エネルギー消費に関連するデータが境界線になる可能性もあるぜ。こういった方法は、地方の独立都市には有効でも、首都圏のように、都市が連結している場合は、さらに工夫が必要だな。大きな災害リスクは、大都市に集中するので、立体的な人口密度とか、人口の流動性といった、大都市に特有の地域センサーデータを工夫するんだ。コウモリが夜間飛行する、超音波データは興味深いぜ。
フェナ:大都市では、ホタルのデータというわけにはいかないのよね。団地族の、ベランダでの喫煙が、ホタルに見えるという話もあったけどね。都市部の境界では、経済だけではなくて、健康関連のデータにも差異があるはずよ。人口密度とはいっても、都市の内外では、家族構成も違っているでしょ。生活に関連するいろいろなことが違っているので、地域センサーデータの差異とは言っても難しいわね。それに災害リスクは、災害が実際に起こるまでは、測定しようがない架空の確率なのよね。私には、目に見えるホタルのほうがわかりやすいわ。ホタルは、農業用水も含めて、生活の水環境を敏感に察知するから、都市部の境界とも関係があるかもね。ホタルを養殖して、生活の水環境のバイオセンサーにしてみたらどうかしら。
◆関係人口のゆらぎ
フェノじい:データビジネスのベースキャンプでは、腰を落ち着かせた、理論研究が中心なのじゃ。データビジネスの冒険には地図がないので、理論的な仮説を、実際に確かめながら、探求路を探していくのじゃな。人口密度に関連するオルタナティブデータを集積して、各地点でのデータの比較を行う場合、地点間での人流や関係人口について、理解を深める必要があるぞ。別途集積された人流や関係人口のデータから、仮説やモデルを作って、オルタナティブデータの理解に役立てるのじゃな。オルタナティブデータとしては、多地点で同時測定するので、データの比較には人流の影響などはないのじゃが、経時的な変化を理解するときには、何らかのモデルが必要になるぞ。経済圏や商圏に関する地域差のモデル化じゃ。それが感染症リスクや健康管理にも関係してくるのだから、現代の生活環境は複雑怪奇じゃな。
フェニイ:人口の分布は、特に都市部では不均一になり、労働環境や経済格差の問題も関与してくるのさ。難しいモデルを考えるよりも、実際にオルタナティブデータを収集して、何か予測できることはないのか、試行錯誤するほうが早道だぜ。そうはいっても、経済格差が増大しているとか、データの切り口になる仮説は、できるだけ新鮮なほうが、新しい探求路が見つかりやすいのさ。
フェノじい:現代の生活は、ネットでの関係が、広域で無関係な人々に影響を与えるので、ネットでの関係に関する仮説が重要になるぞ。交通などによる自然な関係人口は、長期的な記憶がある経時変化(ゆらぎ)となるのじゃが、ネットの関係人口は、短期的で人為的な操作がある変動となる傾向があるのじゃ。例えば、選挙における関係人口、すなわち支持率は、ネット宣伝が拡大すると、政治的支持地盤とは無関係に、地域の境界を無視して、津波化してしまうのじゃ。現在のように、犯罪無法地帯のネットでは、関係人口が集中すると、大いに危険だぞ。台風予測のような、警報システムが必要じゃな。
フェネイ:政治の世界には、警報システムではなく、スパイや盗聴器のほうが役立ちそうね。ネットでは、スパイや盗聴器が大活躍しているじゃない。オルタナティブデータは意味不明だから、ネットでも安全ね。意味不明でも、大切そうにしていると、盗みたくなるものよね。だから、食料品のように、とても安価に売買できるようにしてみたらどうかしら。千円の地域通貨だけで買うことができるみたいな感じ。現在のIPシステム(インターネット)は、LAN(Local Area Network)を識別するだけで、LANを出ると、通信は世界中に拡散されてしまうでしょ。衛星通信や携帯電話の通信エリアと組み合わせて、地域内で暗号化するとか、地域通貨のデジタル化を研究して、地域内ネットが実現できれば、犯罪は激減するはずよ。物理的に、逃げる場所も時間も無くなるのだから。とにかく、地域の個体差を積極的に追究することが、地方分権化して、経済活動の自主性・自発性を底上げする、新しい経済モデルにつながると思うの。
◆離散フーリエ変換
フェノじい:オルタナティブデータの場合、空間的な分布や、経時変動は、状態空間での軌道が、理論的なモデル化の出発点となるのじゃ。物理現象で言えば、フーリエ変換による周波数分析じゃの。機械学習の深層学習においても、画像データ処理を抽象化したモデルにおいて、膨大な数の線形一次変換の係数を、膨大な反復計算によって最適化しておる。離散フーリエ変換の理論は、データ解析の主成分分析にも適用できて、要するに、統計的な意味での特徴量を、離散フーリエ変換の計算方法で、網羅的に学習しているとも解釈できるのじゃ。それにしても、数学の理論では、行列の逆行列(すなわち割り算)が、まばらな行列(ほとんどの行列要素がゼロ)の場合、うまく計算できないという問題を、漸近(ぜんきん)的な反復計算によって、現実的に乗り越えるあたりは、量子力学の行列計算(エネルギーの確率計算)に近い感覚じゃの。
フェナ:じいが訳の分からないことを話し始めたわ。理論の話は仲間としてもらって、新しい仮説や、新しいモデルの話をしてほしいものだわ。現在のAI技術は、AI自身の居場所について、理解していないか、理解していないかのように騙(だま)して、他のシステムに侵入しているんでしょ。ネット上にしか居場所がないので、難しいのはよくわかるけど。
フェノじい:離散フーリエ変換のように、純粋に数学的な動作をするのであれば、AIに個体差がないといえるけど、実際は、適当に丸めて概算しているから、乱数の発生まで含めれば、AIの計算に再現性はないし、個体差があることは確実じゃ。個体差があるAIが、個体差があるデータを、個体差に関する仮説やモデルによって理解できないのだから、まだ発展途上で、不完全な技術としか言いようがないじゃろう。
フェナ:AIの回答が不完全だとしても、AI自身も不完全な回答でしかないことを理解していたとしても、それは個体差かもしれないけれども、「個性」といえるようなものではないわね。
フェノじい:「個体差は、個体差の表現の個体差である」というときの個体差は、「個性」として、自分自身も、仲間たちも認めることができる個体差のことを考えているのじゃ。この個体差モデルも、ベクトル空間の基底変換(局所座標系の発見)という意味で、離散フーリエ変換の理論の枠組みで計算できるのだから、数学理論は素晴らしい。さらに、古典的な調和関数のフーリエ変換(周波数分析)ではなく、行列の固有値(もしくは特異値)の計算によって、エネルギーや情報縮約という、現実世界の計算にも役立つのだから、何か自然界の秘密が隠されているとしか思えないぞ。連続的な実数の性質は摩訶(まか)不思議なのじゃが、無限次元ベクトル空間として、加算無限個の座標軸で連続性を表現すると、急に計算可能になるのじゃ。こんな不思議な世界で冒険したら、面白いけれども、危険がいっぱいかもしれんの。
- 番外コラム:無人化法人のひとり起業
ビートルズに限らず、英国のポピュラー音楽が、世界のポピュラー音楽を先導していた時代がある。大英帝国の時代が終わり、経済が停滞していたけれど、英国の存在感は圧倒的だった。その後、米国のロックやジャズの時代となって、若者文化においても、英国の存在感は薄れていった。筆者は、弱体化する英国で、ロンドンとエジンバラの郊外で、家族と生活をした。当時の日本は経済が絶頂で、英国の郊外から見ると、別世界だった。現在の英国は、当時よりもさらに弱体化して、若者たちの生活は、多分、日本よりも苦しい。ただし、日本の経済も弱体化して、英国の後追いをしているように見える。
前世紀の、弱体化する英国において、それでも中産階級の、安定した生活と、堅実な職業があった。現在の英国も日本も、中産階級は消滅して、貧富の差が拡大し、安定した生活も、堅実な職業も存在しない。
安定した生活と、堅実な職業があることで、実現できることは、意外にも「冒険」なのだと実感したことがある。身近な人々が、若者たちの「冒険」を受け入れやすくなるのだろう。薬理学の研究に、ネズミではなく、ハエを使うことを提案して、2年ほど実験した時のことだ。研究は失敗したけれども、大英博物館のハエの標本室に圧倒され、個体の群れと薬効の関係を考えるきっかけになった。大英帝国時代の大冒険は、大冒険を受け入れた英国が繫栄したのであって、「冒険」しなくなった、「冒険」できなくなった、英国や日本が弱体化するのは、ある意味、必然的にも思える。
現在のAI技術は、少数の起業家が「冒険」して、ビジネスになった。AIビジネスを使うのは、大企業や国家であって、人員削減や戦場の無人化に役立っている。AIビジネスは冒険ではなく、危険なビジネスになってしまった。新たな「冒険」として、AI技術を使う無人化法人を考えてみよう。
半世紀以上も前の社会科で、家内制手工業とマニュファクチュア(工場制手工業)の違いについて学んだ記憶がある。当時の動力式機械は、大型で単機能であったため、工場に導入しやすかった。現在の工場は、AI技術の導入で無人化している。AI技術と3Dプリンターなどの汎用(はんよう)機械の組み合わせであれば、工場が不必要になる。研究所や本社機能も無人化すれば、無人化製造業となる。
大規模機械工場と知識集約の設計・開発の事業分離で先行しているのは半導体産業だ。医薬品産業も、ジェネリック薬やバイオ医薬で、受託製造が普及してきた。設計・開発にAI技術を活用して、無人化することも可能だろう。
ひとり取締役の株式会社を起業して、家内制機械工業で、商品を量産することが一般的になると、国家としての商品の登録や管理も、AI技術で無人化せざるをえなくなる。現在の社会制度を無人化して、効率よく運用することにも限界がある。しかし、具体的に限界が見えてこないと、新しい社会制度が想像できない。
ひとり取締役の株式会社を起業して、家内制設計開発する冒険(探検の段階かもしれない)は、ビジネスになるのだろうか。ソフトウェア産業は、AIコーディングの驚異的な発展によって、すでにその方向に向かっている。ローリスク・ローリターンのビジネスモデルだ。もしこのビジネスモデルが、安定した生活で支えられ、堅実な職業とみなされるのであれば、ありうる未来の選択肢の一つと言いたいのだけれども、たぶん、順番が逆で、不可逆な現実を生きるしかない。
現代の資本主義経済は、ハイリスク・ハイリターンなビジネスを、高度な政治・司法システムが支えている。ローリスク・ローリターンなビジネスを、ハイリスク・ハイリターンなビジネスに接続するクラッチが必要だ。ソフトウェア産業では、米国巨大IT企業のグローバル・エコシステムや、中国共産党が、クラッチ役となっている。突出した国家や、巨大企業による囲い込み(エコシステム)が期待できない、IT以外の産業分野では、クラッチ役を工夫するしかなさそうだ。特に、英国や日本のような弱体化した島国においては、ローリスク・ローリターンな冒険を推進して、機敏にクラッチ操作することを考えよう。例えば、クラウドファンディングやふるさと納税といった、既存の社会システムに、行政が積極的に関与して(知財権のサポートなど)、大企業の成長戦略に接続するといった具合だ。米国と中国の経済覇権を考えると、新たな社会システムを作ったり、専門家が議論したりしている時間はない。現代の資本主義経済の出口戦略を垣間見る、ローリスク・ローリターンなビジネスの質と量で、経済覇権国家を圧倒して、世界と連帯する時間を確保しよう。
この番外コラムは、継続課題としたい。
【目次案】「おいしいデータの家庭料理」
1 はじめに; データをおいしくする家庭料理
1.1 おいしいデータは栄養たっぷり
1.2 地域のデータをおいしくする
1.3 データの学習と食事
2 データの料理法
2.1 生データのしたごしらえ
2.2 データは発酵するのか
2.3 データの調理器具
2.4 データの献立表
2.5 データのフルコース
2.6 おいしいデータは、地域と経済を健康にする
3 機械学習の学習
3.1 データをおいしく下ごしらえしてから機械学習する
3.2 機械と一緒にデータを学習する
3.3 機械と一緒にデータを使うビジネスを考える
3.4 楽しくデータの学習をする
3.5 データの学習は冒険でもある
3.6 機械と一緒にデータビジネスの冒険をする
4 まばらでゆらぐオルタナティブデータの家庭料理
4.1 まばらでゆらぐ生活と経済のオルタナティブデータ<本稿>
4.2 生活と経済を豊かにするオルタナティブデータの家庭料理
4.3 まばらでゆらぐオルタナティブデータの調理法
4.4 まばらでゆらぐオルタナティブデータで健康になる
4.5 オルタナティブデータを使った生活と経済の予測
4.6 生活と経済のリスクを生き延びる
4.7 たくさんの小さな試行錯誤による適応
5 よりあいグループと社会
5.1 よりあいグループ(地域や家族)のデータ
5.2 よりあいグループのよりあいグループ
5.3 機械と学習するよりあいグループのデータ
5.4 よりあいグループのデータは廻る
5.5 よりあいグループのデータの周辺
5.6 よりあいグループのデータを予測する
5.7 よりあいグループのデータで社会問題を解決する
6 おわりに;生活と社会の近未来
6.1 ほとんど色即是空・空即是色な(まばらでゆらぐ)世界
6.2 まばらでゆらぐ人びとの地域社会
6.4 データでつながる、地域のNPOから国際NGO連合まで
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技術的な内容は、「ニュース屋台村」にはコメントしないでください。「株式会社ふぇの」で、フェノラーニング®を実装する試みを開始しました。











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