古川弘介(ふるかわ・こうすけ)
海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。
◆ はじめに
MMT(Modern Monetary Theory)の2回目である。MMTは、現代金融理論、あるいは現代貨幣理論と訳され(*注1)、「主権国家における自国通貨建ての政府債務(国債)は債務不履行にならないので、デフレ対策のために財政赤字や債務残高は気にせず財政支出を積極的に行うべき」と主張する。前稿でみたように、ケインズ左派が唱えるMMTの理論は堅固であり、その貨幣解釈は主流派経済学と比べて説得力を持つ。しかし、たとえ原理的に正しいことであっても、あくまで経済における仮説にすぎず、そのまま現実の政策に直結させるのは慎重であるべきだろう。MMTが主張するように、債務残高を気にせず財政支出を拡大していって、想定外の事態に直面すれば財政危機を招き、経済のみならず社会に甚大な被害を与える可能性がある。現実の経済は不確実性に満ちており、仮説通りにいかないというのがケインズの教えだったのではないか。 記事全文>>

バンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住22年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。
オフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。








