п»ї トヨタが百度の「アポロ計画」に参画 複雑化する自動運転を巡るアライアンス 『中国のものづくり事情』第22回 | ニュース屋台村

トヨタが百度の「アポロ計画」に参画
複雑化する自動運転を巡るアライアンス
『中国のものづくり事情』第22回

7月 29日 2019年 経済

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Factory Network Asia Group

タイと中国を中心に日系・ローカル製造業向けのビジネスマッチングサービスを提供。タイと中国でものづくり商談会の開催や製造業向けフリーペーパー「FNAマガジン」を発行している。

先日、中国ネット検索最大手、百度(バイドゥ)が主導する自動運転の開発連合「アポロ計画」にトヨタ自動車が参画することが明らかになり、日本でも大きく報じられたが、意外な動きである。なぜならトヨタは自動運転について独自に開発を進めており、2018年秋には、日本国内でソフトバンクと共同出資による移動サービス会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」を設立している。

それは「MssS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」を提供するプラットフォーマーになることを意味し、同社には本田技研工業と日野自動車が出資しているほか、マツダ、スズキ、スバル、ダイハツ工業、いすゞ自動車も出資を表明している。さらに今年4月には、デンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(ビジョンF)とともに、米ウーバー・テクノロジーズの自動運転開発部門に10億ドル(約1100億円)を出資すると発表している。日米をまたいでアライアンスの構築を進めているわけだが、中国には中国独自のルールが存在する。中国で自動運転に取り組むには、中国の枠組みに参加することが最適な方法だと判断したのだろう。

5月には、トヨタが中国の配車アプリ最大手、滴滴出行への出資を検討していると報じられている。同社も膨大なデータを武器に自動運転の開発を進めているが、トヨタはバイドゥ陣営を選んだということになる。

滴滴出行が主導する「DiDi Auto Alliance」には、ルノー・日産自動車・三菱自動車連合が参加していることも、トヨタがバイドゥを選んだことに影響しているかもしれない。各国が自動運転における主導権を握ろうと環境づくりに力を入れるなか、自動車メーカーの動きも複雑になってきている。

どこが主導権を握るのか

アポロ計画は自動運転車向けのソフトウェアプラットフォームをオープンソース化するプロジェクトで、バイドゥが17年4月に開始。欧米の大手自動車メーカーをはじめ135社以上が参加し、日本の自動車メーカーでは、トヨタがホンダに続き2社目となる。

同社は7月3日に開催した「Baidu Create 2019」でApollo 5・0のリリースを発表、利便性を向上させた。開発者はクラウドを利用することで、1台のクルマの動的校正が30分で可能となり、1週間で100台の校正が可能になるという。つまり、量産に対応できるわけで、着々と実用化に近づいている。同社は近々、湖南省長沙市で自動走行するロボタクシーの試験運行を始める計画だ。

自動運転を巡っては、阿里巴巴(アリババ)や、騰訊(テンセント)も追随し、BATがそろって開発に熱を上げている。また、華為技術(ファーウェイ)もアウディとの協業で開発を進めているが、始動が早かったバイドゥが一歩先を行っている。世界的な評価も高く、米調査会社ナビガントリサーチが公表した19年第1四半期の自動運転企業ランキングでは、バイドゥが9位のトヨタを上回る8位にランクインしている。

このままバイドゥのアポロ計画が中国における自動運転のスタンダードになるのだろうか。「36氪」(7月2日付)はそれに異を唱える。自動運転技術は自動車にとって〝核心的パーツ〞の一つであり、同計画に参加しているからといって、慎重な自動車メーカーがシステムと深い結びつきをもつわけではないと指摘。バイドゥ自動運転事業部の王勁氏は、「国内の自動運転企業と自動車メーカーの提携には非常に大きな障害がある。すなわち、誰が主導権を握るかという問題だ」と課題について言及している。

メーカーからすれば、プラットフォームを利用するだけ利用して、核となる部分は自社で開発を進めたいのが本音だろう。自動運転の実用化は、日米や欧州より中国の方が早いのではないかという見方も強いが、バイドゥは果たしてその中心に君臨するのか。今後の動向を注視したい。

※本コラムは、Factory Network Asia Groupが発行するFNAマガジンチャイナ2019年8月号より転載しています。
http://www.factorynetasia.com/magazines/

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