п»ї 「銀河街の悪夢」から考える支援者を作るために必要なこと 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第260回 | ニュース屋台村

「銀河街の悪夢」から考える支援者を作るために必要なこと
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第260回

7月 26日 2023年 社会

LINEで送る
Pocket

引地達也(ひきち・たつや)

%e3%80%8e%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%83%bc%e3%83%8a%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%83%e3%82%af%e3%81%aa%e3%82%84%e3%81%95%e3%81%97%e3%81%84%e6%9c%aa%e6%9d%a5%e3%80%8f%e5%bc%95%e5%9c%b0%e9%81%94特別支援が必要な方の学びの場、みんなの大学校学長、博士(新聞学)。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般財団法人発達支援研究所客員研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。

◆突き刺さる当事者の歌   

障がい者への就労支援をする支援員を育成するためのプログラムを作成する中で、ふと迷いが生じてしまい、自分を勇気づけてきた動画を久しぶりに開いてみた。

それはSEKAI NO OWARIの「銀河街の悪夢」である。

ユーチューブ動画では、2014年5月24日、旧国立競技場の最後の音楽イベントとして行われた「SAYONARA国立競技場 FINAL WEEK JAPAN NIGHT」でのライブパフォーマンスが有名かもしれない。精神疾患に悩む若者がふとんから出られず、やりたくてもやれないもどかしさ、が展開するアニメーションを背景にした演奏だ。

ボーカルのFUKASEが注意欠如・多動症(ADHD)、パニック障害で悩まされ、隔離病棟での入院経験もあるその彼が作った歌は当事者の心境を表現したものとして、いつも心に突き刺さる。

今回もまた、支援者を作る以前に自分の支援を見つめ直すことになった。

◆病状悪化のラインの数々

この動画を見た直後、私のLINEにいくつかのメッセージと画像が飛び込んできた。精神疾患の病状が悪くつらい状況にある人からの、今起こっているトラブルに関する情報だ。

即座に電話するが、今の段階で何か自分に具体的にできることはなく、今の気持ちを聞く、自分の今できることを考え言葉にし、今後の見通しを無理のない範囲で話してみる、しかできない。いくら聞いても、言葉を選んでみても、当事者の今、置かれている状況は変わらず、週内に病院の予約が取れていることだけが希望だった。

電話を切った後、私とつながらない時間、この人はどんな思いをしているのだろうか、と思いを巡らす。「銀河街の悪夢」のように、ふとんの中で眠られず、体をこわばらせて苦しい思いが逡巡(しゅんじゅん)していないだろうか、そして希死念慮が増幅していないだろうか。心配を募らせながら、自分のするべき仕事が次から次へと舞い込んでくる。

LGBT当事者から学ぼう

そして、その夜は就労支援と性的少数者(LGBT)について研究者とディスカッションを行い、課題の抽出と共有化の手法について協議した。LGBTへの理解を進めるための「LGBT理解増進法案(LGBT法案)」が与野党間の合意を受けて国会で可決したことを受けて、合理的配慮の確認や就労時の支援のポイントを抽出しようとの趣旨である。

私自身、LGBTの方への支援の関わりで、最もコミュニケーションの手法が分からないのが本音である。自然に語らい、関わることが基本だから、知り合いの当事者とはスムーズな関係を築いているが、それが支援になるとまだまだ未知の部分が多いから、当事者に学ぶのを優先しよう、との考えで一致した。

先日の当事者の話によると、東京都某区では、当事者が権利擁護を啓蒙(けいもう)する行進の計画を相談したところ、「障がい者が集まって権利を叫ぶのを嫌がる人がいる」との説明を受けて愕然(がくぜん)としたという。

◆通底するもどかしさ

この自治体の方から出る乱暴な言葉、に驚くものの、先の法案の審議中でも一部の国会議員からも無理解な言葉や反対意見が出たことを考えると、まだまだ学びが必要なのが現実であろう。LGBTQ当事者にとって、その存在が理解されないもどかしさ、障がいにより思うように自分が生きられない悔しさ、それは通底する社会的課題である。

冒頭の「銀河街の悪夢」の歌詞にはこうある。

「だって昨日も一昨日も変わろうとしてたけど 今日も僕は変われないまま 今日がまた終わっていく」

変わろうとして自分が変われないもどかしさ、それを「社会」が押し付けている可能性、その苦しさとは「負わされたものかもしれない」ものとして想像できるかが、支援者の基本ではないだろうか。

「明日また起きたら何か始めてみよう だから今日はいつもより早く眠りにつこう  だけど眠れなくて朝日が昇るんだ 明日はもっと自分が嫌いになるのかなぁ」

この状況に大丈夫、と言える支援者を増やすために、どんなプログラムを作ればよいだろう。

One response so far

コメントを残す