п»ї 草野球、アプリ、15万円 神戸が発する障がい者の生涯学習の波 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第266回 | ニュース屋台村

草野球、アプリ、15万円
神戸が発する障がい者の生涯学習の波
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第266回

11月 29日 2023年 社会

LINEで送る
Pocket

引地達也(ひきち・たつや)

%e3%80%8e%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%83%bc%e3%83%8a%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%83%e3%82%af%e3%81%aa%e3%82%84%e3%81%95%e3%81%97%e3%81%84%e6%9c%aa%e6%9d%a5%e3%80%8f%e5%bc%95%e5%9c%b0%e9%81%94特別支援が必要な方の学びの場、みんなの大学校学長、博士(新聞学)。文部科学省障害者生涯学習推進アドバイザー、一般財団法人発達支援研究所客員研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。

◆キーワードは対話

障がい者の生涯学習を推進するための「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」(近畿ブロック)が神戸大学で開催された。2018年度から文部科学省の委託事業として実施しているコンファレンスは全国で行われ、今回の近畿ブロックは兵庫県教育委員会や神戸大学が主催した。

神戸大学は「学ぶ楽しみ発見プログラム」(KUPI)として週3回、学生と知的障がい者10人ほどが一緒に授業に取り組む実践を行ってきた。兵庫県教育委員会は障がい者の学びついて「どのような学びの場があるかわからない」との声に対応する「学びの場の検索アプリケーション」を作成し、機能させている。

福祉事業型の「エコール神戸」のプログラムは常に先進的で、私はその先駆的な地で、実態や雰囲気を味わおうと参加した。

コンファレンス全体にあったのは、当事者、支援者、関係者が一体になる空気感だ。これは生涯学習を推進してきたこの数年の確かな結果と受け取れるが、神戸大学の津田英一教授は「まだこれらは珍しい取り組み。身近にどんどん増やしていきたい」と話し、今後に向けてのキーワードは「対話」だと総括した。

◆意味生成的な美術鑑賞

コンファレンスでは最初から受付時に支援者か当事者か、家族かなどの属性から座席が決められ、4人ほどのグループになり、属性の違う人たちが「個人的」話をするところからスタート。これで周辺の方への親近感が確保され、場は自然と融和的になり、本格的にコンファレンスが始まる。

講演では神戸大学の勅使河原君江准教授が「美術を楽しもう!~対話を基本とした美術鑑賞を通して~」と題して、絵画を見て感じたことを言葉にしてもらいながら新しい発見や驚きにつながる鑑賞手法を実践的に説明した。

元永定正の作品ではカラフルな抽象画に対する予想もしない学生の言葉やイメージにおかしみを感じながら、楽しく学ぶ手法が展開された。それは「対話による意味生成的な美術鑑賞」と定義される。

勅使河原准教授は「表現をしたいということにつなげ、鑑賞と表現のサイクルを意識してほしい」と実践のポイントを示した。会場からは学生の間で意見が対立した場合の対応として、「作品にもどり、(その対立している)言葉の理由を深めていくこと」と説明した。

◆障がいのある選手たち

実践発表では、神戸市内で活動する障がい者の野球チーム「ダンデライオンズ」の監督と選手が「私たちが輝ける場所~障がい者野球に出会って~」と題し、自らの思いを語った。身体障がい、聴覚障がい、ダウン症など様々な障がいのある人で構成するチームは2023年1月に結成。10代から50代の計19人の選手が所属している。

聴覚障がいのある新島浩章選手はプレー中のコミュニケーションは大変だとしながらも「大好きな野球ができる幸せを感じている」と話した。知的障がいのある中谷佑人選手は特別支援学校時代にできなかった過去を振り返り、今初めて「野球の楽しさを感じている」とし「仕事のお金は野球道具に使っている」と発表した。

小学生の頃の脳出血により車いすでプレーする永友達雄選手は、登録している連盟で優勝したいとの意気込みを示し「みなさまの熱い応援が必要です」と今後のかかわりを要望した。

1人の声からはじまる

さらに兵庫県朝来市の「オープンカレッジ」の取り組みを同市職員出身で現在はボランティアスタッフである足立志津子さんが2004年に公民館講座としてスタートして以来の19年の活動を報告した。

講座の講師はすべて市民で身近な資源を活用したことで無理ない運営を可能にしているようで、足立さんは「年間15万円で十分できる」と明らかにし「みなさんが行政にできることを声に出してほしい」と語った。発表を聞きながら、このコンファレンスが2018年に始まり、その1回目からかかわってきた経緯を振り返りながら、野球が生涯学習になる進化、どんな地域でも一人の声により始まり、続けられる可能性を感じた。

障がい者の学びは多様であり、新しい発見、自分の可能性の追求は各個人の生きがいややりがいにつながり、それは学びと強く結びついている。そのために、として津田教授は「何かと出会う、自分の考えを持つ、人に伝える、人の意見をおもしろがる、みんなで共感する、世界の見方が広がる。これらがいろいろな学びの場で大切にしなければならない原理ではないでしょうか」と締めくくった。

One response so far

コメントを残す