п»ї 「食事」がつなぐ地域のぬくもり 大阪市中央区の「子ども食堂」から見える未来 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第267回 | ニュース屋台村

「食事」がつなぐ地域のぬくもり
大阪市中央区の「子ども食堂」から見える未来
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第267回

12月 04日 2023年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆外食経験も目的

大阪地下鉄の堺筋本町駅からほど近いビルの1階にあるレストラン「25twogo」(大阪市中央区)はこの日、「貸し切り」の案内を出していた。店内からはいつもと変わらない料理のおいしそうなにおいに混ざって子供の歓声が聞こえる。月1回の地域に向けた子ども食堂の日である。

レストランの本格料理がそろうバイキング形式だが、幼い子供は自分で取るのは難しいから、「これがいい」「あれがいい」とスタッフとやりとりしながら夕食がスタートする。メニューはキーマカレー、牛肉の煮込み、塩焼きそば、そしてご飯とみそ汁。揚げ物、やサラダ、果物、デザートもある。

主催する「公益社団法人JEO・子どもに均等な機会を」(本部・大阪市)の仲恵一郎理事は「きちんとした料理を出すことにもこだわって、外食経験をしていただくのも目的のひとつです」と話す。

大阪市中央区の「子どもの居場所連絡会」は中央区社会福祉協議会が事務局を務め、「学習支援教室」「フードパントリー」事業を行ってきており、そこに加わる形で2018年に月1回の子ども食堂が始まった。周辺はビジネス街であると同時に繁華街も近い。飲食店で働くシングルマザーの割合も高い地域で、外国出身の母親、様々なルーツを持つ子どもも多く、学習支援では「多文化共生」をテーマにしている。

6年で20倍以上増加

日本財団によると、子ども食堂とは、「貧困家庭や孤食の子どもに対して地域住民のボランティア等が主体となって子どもが1人でも無料で利用できる食事の提供の場」とされている。しかし最近は経済的支援・食事の提供だけが目的ではなく、子どもの心にも焦点を当てて、「団らんの場の提供」とともに居場所の確保、地域とのつながりも意識しての運営が広がっている。

結果的に人が集まる場所には、食事、遊び、学びが発生し、自由でストレスのない「居場所」が増えつつある。NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの調査によると、2022年のこども食堂は全国で7363か所、2016年の319か所から20倍以上も増加した。

都道府県別では1位が東京の839か所、2位が大阪府の613か所。しかしながら行政が積極的に関与するかは自治体によるところがあり、地域の自発的な取り組みに頼るケースは多い。「25twogo」もJEOを主催としているものの、この会員企業である株式会社ベックの協力があって成り立っている現実がある。

◆調理体験に「よかったね」

子ども食堂はベック社の飲食事業部門が協力する形で運営され、同社グループ会社の社員がボランティアスタッフとしても関わる。同社としては社会貢献活動の位置づけだ。

この食堂では食事を提供するだけではなく、調理教室も行い、この日は卵焼きやベーコンエッグをボランティアスタッフと一緒に作る体験をした。卵を割って、卵をかき混ぜ、塩コショウを加えて、フライパンで焼く――。初めての経験に小学校の低学年の子どもはおそるおそる取り組むがきれいな卵焼きができると表情は満面の笑み、周囲から「よかったね」の声がこだまする。JEO事務局の荒木香さんは「体験を通じて自分でできるようになるといいですね」と話す。

食べ終わった子供たちは用意されたゲームや塗り絵でスタッフと遊ぶのもこの子ども食堂の特徴だ。スタッフである社員らは、子どもとの交流を職業的に行っている立場ではないが、そのやりとりを見ていると、子ども食堂の4年の経験は確実に子どもとの絆が深まっているようにも見える。4年前の開始時は赤ちゃんだった子どもが今や成長し活発に動きまわる成長をみてきたから、もはや他人ではないのだろう。

◆困りごとは運営費と行政の協力

これらの活動は企業にとっては業務外ではあるが、仲理事は「普段の仕事に誇りを持ってもらうためにもこのような活動は必要」だと話す。「子どもが好きだからね。このような状況を作っているのは自分たちでもあるから、その責任もある」

先ほどの調査では子ども食堂の開催に関する「困りごと」も収集しており、その中には「保健所から持ち帰りの許可が下りない」「調理品の不足」「個人情報保護のため行政の壁の高さを実感」「衛生用品が手に入らない」「行政と学校の連携が難しい」などが示された。

運営費、行政の協力、衛生面での安全確保など、クリアしなければならない課題が多い中、現在展開中の子ども食堂はその必要性を感じ、生み出すエネルギーを発出し、地域で新しい挑戦をした結果の証しとなっている。

これらの課題を地域で見つめながら、誰かに頼る形ではなく、地域に必須の取り組みとして行政や福祉サービス、企業が一体となって手掛けられる仕組みを模索し、必要な場所に子ども食堂を増やす使命感を社会全体で認識したい。

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