п»ї 重度障がい者への訪問講義が当たり前の「平等」で行われるために 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第198回 | ニュース屋台村

重度障がい者への訪問講義が当たり前の「平等」で行われるために
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第198回

9月 16日 2020年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆全国に広げる役割

昨年度から始まった私たちの大学校の重度障がい者への訪問講義は新型コロナウイルスの影響で4月からのスタートとはならなかったものの、なんとか今学期中に予定通り2人の学生の講義を開始することができた。

埼玉県川越市の学生は通所施設が外部からの訪問が禁止され、学生自身も肺炎にかかってしまい入院となり、なかなか学期スタートを切れなかったものの、この日やっとのことでテーマである「世界の国々」の学びの途に就いた。われわれの大学校はNPO法人地域ケアさぽーと研究所が行う「訪問ガレッジ@希林館」(東京都小平市)と連携し、先達に学びながら実践しているが、重度障がい者の学びはまだまだ限定的である。

この学びを全国に学びを広げるのも、われわれの本年度の役割。まずは、学びの「平等」を実現するために、彼ら彼女らの学びを当たり前に保障するという当たり前を共有する必要がある。

◆存在をかけた叫び

この当たり前の浸透に向けて取り組んできた各地の組織・団体が集まり、2018年12月に発足したのが「重度障害者・生涯学習ネットワーク」だ。「訪問ガレッジ@希林館」、「訪問大学おおきなき」(東京都大田区)、「訪問カレッジEnjoyかながわ」(横浜市)、「訪問療育いるか」(東京都杉並区)、「在宅訪問学習支援事業『学びサポート』」(東京都杉並区)、「ひまわりHome College」(東京都新宿区)、「訪問事業i.porte(あいぽると)」(川崎市)、「訪問カレッジ」(静岡県)、「日野市障害者訪問学級」(東京都日野市)の関東大都市圏の9団体で構成された。

設立趣旨では「医療的ケアを必要とする障害の重い方の多くは、在宅生活を余儀なくされていますが、心豊かな生活の実現のために『大学に行きたい!』『もっと勉強したい!』などの『学び』を希求しています。それは、存在を懸けた声にならない叫びです」と力強い言葉が示されている。

ネットワークの活動は「重度障害者の生涯学習システムの開発」をはじめ、理解・啓発活動、人材育成・確保、情報交換と明記しているが、やはりその先には国や各自治体が知恵を出して学習支援を予算化してほしいとの思いもにじむ。重度障がい者の人数は多いわけでないから可能な予算措置と思われるが、国や自治体はまやかしの「平等」を持ち出して二の足を踏むことを繰り返してきた。

◆至らない平等に民間力を

約30年前の話。日本の福祉事業者がノルウェーの福祉事業を視察に行き、障がい者施設が「ホテル並みに」清潔に立派に建てられていることに驚き、「障がい者施設なのにきれいですね」と言ったところ、ノルウェーの担当者に「障がい者施設だからきれいなのです」と諭され、視察者が赤面するという場面があった、とある報告書で目にしたことがある。

このことは、重度障がい者が「学ぶ」ことへの社会や自治体の反応を想起させる。実際に何度も私は「重度障がい者なのに」学ぶのですね、という声を聞いたし、その視点が社会に残っていることはまぎれもない現実である。

誰でも学ぶ権利がある。障害者権利条約第24条は「あらゆる段階における障害者を包容する教育制度及び生涯学習を確保する」ことになっている。つまり重い障がいによって「学びへの障害」が社会にある場合は、その障害を取り除く必要がある。

それは本来、国や自治体の仕事である。自治体のマンパワーがなければ、民間に委託し予算を工面すればよい。それを実際に実践しているのが上記の団体だ。平等、を持ち出すならば、重度障がいのある方々は教育の権利保障において平等まで至っていないのである。

「みんなの大学校」では通学型、ウエブ型などで多くの「学びたい」意志とつながっていく中で、訪問型の重度障がい者の方々も対象だ。誰もが当たり前に思う学習の平等の中で、この訪問講義を展開し、多くの学生と支援者とつながっていきたい。

この拡大を目指した全国フォーラムを11月13日に東京をメーン会場に開催予定で、ウエブで全国でつながる予定だ。詳細は本欄で追って紹介したい。

■学びで君が花開く! 支援が必要な方の学びの場、みんなの大学校

http://www.minnano-college-of-liberalarts.net

■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム

http://psycure.jp/column/8/

■ケアメディア推進プロジェクト

https://info3586507.wixsite.com/caremedia

■引地達也のブログ

http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

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