п»ї 医療モデル偏重と障がい者支援の地域格差是正を東京から『ジャーナリスティックなやさしい未来』第220回 | ニュース屋台村

医療モデル偏重と障がい者支援の地域格差是正を東京から
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第220回

12月 09日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆優先される判断

 障がい者が社会で生きやすくするために、日本社会は「医療モデル」から「社会モデル」に移行するべきだとの議論は数十年続いている。障がいによる生きにくさを医療による治療だけに頼るのではなく、その障がいを社会が規定していることを自覚し、社会に住まうソーシャルワーカーはじめ市民が「障がい」をなくすという考えである。

しかしコロナ下にあって、医療偏重の社会構造は助長されそうな雰囲気もある。それは医療の権限が大きいからで、障がい者支援で言えば、支援の認定が医師の判断が優先される構図があるから。最近の共同通信の調査では、20歳未満の障がい児がいる保護者に支給される「特別児童扶養手当」をめぐり、医師の判断が優先され地域で基準が違うことから地域格差も生まれていることが分かった。

障がい者支援を都道府県や複数の自治体で実践している立場の私にとっては、その自治体によってのバラバラがもはや常識とはなっているが、それで不利益を被る当事者に「仕方ないね」と泣き寝入りするのは、終わりにしたいと思う。

◆児童扶養手当のばらつき

特別児童扶養手当は親などの養育者に支給されるもので、支給額は障がいの程度で違い、1級は月5万2500円、2級が3万4970円。家庭の所得制限があり、全国での受給者は約25万人。6割強が知的障がいのある児童だ。

東京新聞によると、この判定は各地域の判定医が書類だけを見て1人で審査するため、結果にもばらつきがある可能性が高いという。20歳未満人口1万人当たりで比較すると、申請件数は全国平均17件に対し、最も多いのは大阪市の40件、最も少ないのは東京都の8件。対象児童数は最も多いのは沖縄県の269人、最も少ないのは東京の53人だった。

東京都が少ない理由を同紙は、知的障がいの「療育手帳」で最も軽い第4段階の児童を多く自治体は支給対象にしているものの、東京都は支給対象の目安に含めておらず、多くが門前払いしていることを指摘した。

◆車座になって決める

まだまだ社会が障がい者に「障がい」を作っている中で、その「障がい」とともに生きるためには、悲しいかな「健常者」と呼ばれる人がしなくてもよいことをする積み重ねが必要となる。それを成し遂げるには、やはり家庭への「支援」も必要で、その一環としてこの手当はある。

「学び」で障がい者とともに次のステップを一緒に描いている私にとって、その手当は少ない障がい者支援の中の光である。その社会資源の利用可否を自治体がそれぞれの基準で決め、その判定を医療に頼っている現状は、医療モデルから脱却できない社会の縮図でもある。

障がいのある人が地域とともに生きるための前提である「社会モデル」確立への障壁となっているこの様々な「判定」は、本人と医師だけではなく、日ごろ接しているソーシャルワーカーにも発言と認定の機会を与えるべきだと思う。できれば、当事者を囲んで医師もソーシャルワーカーも一緒に車座になって話して決めていくのが理想だろう。

◆本当の共生の仕組みを

東京五輪開催でパラリンピックの競技が連日NHKで放送されたことで、各競技に加え、各種目の障がいクラスが分けられた体系などに触れ、私たちが一つの基準で社会を成り立たせられないことへの実感を得た機会になったのではないかと思う。民放のテレビ局は五輪と変わってそっぽを向いていたのは、「共生社会」に向けた大きな一歩になると意気に感じたスポンサーがいなかったようで残念ではあるが――。

共生社会の中で私たちが支援し支援される存在であることを表現したパラリンピックの閉会式は、オリンピックよりも分かりやすいメッセージを示してくれたと思う。

その演出の中心には間違いなく開催都市の東京都がいた。巨大なこの都市の中で行政組織を運営するのは、本当に大変だ。福祉サービスを提供するにも、基準を厳格にして、平等性を担保して業務の効率化を図ろうとする傾向も分かる。

それでも、やはりこの機会に求めたい。本当の共生に向けての都市づくり、支援の仕組み、というものを。

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