п»ї アフィリエイト広告の法律問題『企業法務弁護士による最先端法律事情』第10回 | ニュース屋台村

アフィリエイト広告の法律問題
『企業法務弁護士による最先端法律事情』第10回

5月 03日 2021年 社会

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北川祥一(きたがわ・しょういち)

北川綜合法律事務所代表弁護士。弁護士登録後、中国・アジア国際法務分野を専門的に取り扱う法律事務所(当時名称:曾我・瓜生・糸賀法律事務所)に勤務し、大企業クライアントを中心とした多くの国際企業法務案件を取り扱う。その後独立し現事務所を開業。アジア地域の国際ビジネス案件対応を強みの一つとし、国内企業法務、法律顧問業務及び一般民事案件などを幅広くサポート。また、IT関連法務分野、デジタルデータに関する最新の証拠収集技法など最先端分野にも注力し、「アジア国際法務×IT法務」は特徴的な取り扱い分野となっている。著書に『Q&Aデジタルマーケティングの法律実務』(2021年刊、日本加除出版)、『デジタル遺産の法律実務Q&A』(2020年刊・日本加除出版)、『即実践!! 電子契約』(2020年刊・日本加除出版、共著)、『デジタル法務の実務Q&A』(2018年刊・日本加除出版、共著)。講演として「IT時代の紛争の解決と予防」(2016年)、「IT時代の紛争管理・労務管理と予防」(2017年)などがある。

1 アフィリエイトとは

アフィリエイト広告をご存知という方は多いと思われます。少々堅い説明としては、アフィリエイトあるいはアフィリエイトプログラムとは、インターネットを用いた広告手法の一つで、そのビジネスモデルは、「ブログその他のウェブサイトの運営者が当該サイトに当該運営者以外の者が供給する商品・サービスのバナー広告等を掲載し、当該サイトを閲覧した者がバナー広告等をクリックしたり、バナー広告等を通じて広告主のサイトにアクセスして広告主の商品・サービスを購入したり、購入の申し込みを行ったりした場合など、あらかじめ定められた条件に従って、アフィリエイターに対して、広告主から成功報酬が支払われるもの」(「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(平成23〈2011〉年10月28日、一部改定 平成24〈2012〉年5月9日。消費者庁)などとされています。

アフィリエイト広告を掲載するウェブサイトやブログ、SNSなど(アフィリエイトサイト)の運営者をアフィリエイターといいますが、近時の報道によれば、国の承認がない健康食品に関して特定の疾病に対して効果があると宣伝したなどの理由で、医薬品医療機器法違反の疑いでアフィリエイターが書類送検されたという事例が発生しています。

手軽に個人が始められる半面、あまりコンプライアンスを意識した利用がなされていないという側面もあるものと思われます。

また、背景にある状況としては、アフィリエイターはアフィリエイトサイトを経由して広告主の商品が売れることで報酬を得ることになりますので、報酬を得たいがゆえに、誇大・過激な表現をもって集客を行うなどの可能性がその構造上存在しているといえるでしょう。

2 広告主の法的責任の可能性

上記の近時の事例はアフィリエイターが書類送検されたものであり、アフィリエイターの法的責任が問題となった事例となりますが、それでは広告主はアフィリエイターが作成した商品やサービスに関する紹介文などに関連して何らかの法的責任を負う可能性があるのでしょうか。

この点については、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和2〈2020〉年4月1日改定、消費者庁)(以下、「同留意事項」)における、景品表示法、健康増進法などの「表示」の主体、すなわち「表示をした事業者」の解釈に関する検討が一つの参考となります。

同留意事項においては、景品表示法及び健康増進法の規制の対象となる、表示をした事業者として、

自ら又は他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者

②他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者

③他の事業者にその決定を委ねた事業者

が挙げられています。

①及び②については、表示内容を積極的に広告主が発案としたか否かなどの差異はあるものの、広告主は具体的に表示内容について決定を行っているといえ、規制の対象となる事業者と解されることは自然と考えられますが、③の「他の事業者にその決定を委ねた事業者」についても、規制の対象となる表示をした事業者に含まれるとの見解が示されている点には注意が必要です。

同留意事項では、アフィリエイト広告の広告主の責任についても具体的に検討を行っており、「アフィリエイターが、アフィリエイトサイトにおいて、広告主の販売する健康食品について虚偽誇大表示等に当たる内容を掲載することがある。このようなアフィリエイトサイト上の表示についても、広告主がその表示内容の決定に関与している場合(アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合を含む。)には、広告主は景品表示法及び健康増進法上の措置を受けるべき事業者に当たる。」としています。

 ここでは、広告主がその表示内容の決定に関与している場合に「アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合を含む」と考えている点に注意が必要となるでしょう。

 このような考え方は、景品表示法、健康増進法との関係のみにとどまらず、その他規制法との関係での、アフィリエイト広告に関する広告主の責任の検討においても参考になると考えられます。

また、広告主自体の法的責任の発生の有無にかかわらず、アフィリエイターの作成した紹介文などが違法その他問題のある内容である場合には、これを放置することは自社の商品やサービスのレピュテーションとしてもマイナスの影響があり得ますので、いずれにせよ可能な限りの対策を講じることが望ましいと考えられます。

3 対応策

以上のような法的問題の可能性に対する対策としては、定期的な監視、アフィリエイターが紹介を行う場合の定型的な紹介文の作成(リーガルチェックを経たもの)、またはアフィリエイターやアフィリエイト・サービス・プロバイダ(「ASP」)との間で、法令順守などの適切な義務などを定める契約の締結などが検討されます。

なお、ASPとは、広告主とアフィリエイターを仲介し、アフィリエイト成果報酬の支払いや広告を配信するためのシステムの提供などを行っている主体になります。

定期的な監視については、ASPを起用したアフィリエイトプログラムの場合には、広告主において全てのアフィリエイター・アフィリエイトサイトの内容の把握は困難であることが想定されますが、そうであるとしても、可能な限りにおいて、インターネット上での定期的な監視は重要と考えられます。

関連書籍:『Q&Aデジタルマーケティングの法律実務~押さえておくべき先端分野の留意点とリスク対策~』(拙著、2021年刊、日本加除出版)

https://www.kajo.co.jp/c/book/40861000001

※本稿は、私見が含まれ、また、実際の取引・具体的案件などに対する助言を目的とするものではありません。実際の取引・具体的案件の実行などに際しては、必ず個別具体的事情を基に専門家への相談などを行う必要がある点にはご注意ください。

※『企業法務弁護士による最先端法律事情』過去の関連記事は以下の通り

第9回 デジタル遺産の法的問題

第8回 社内不正調査などにおける会社管理メールの調査の法的問題

第7回 近時のデータ保護規制、中国インターネット安全法関連法規

第6回~近時のデータ保護規制、中国インターネット安全法関連法規~

近時のデータ保護規制、中国インターネット安全法 『企業法務弁護士による最先端法律事情』第6回

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