п»ї 二重国籍による混乱 『国際派会計士の独り言』第26回 | ニュース屋台村

二重国籍による混乱
『国際派会計士の独り言』第26回

5月 02日 2018年 経済

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内村 治(うちむら・おさむ)

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オーストラリアおよび香港で中国ファームの経営執行役含め30年近く大手国際会計事務所のパートナーを務めた。現在は中国・深圳の会計事務所の顧問などを務めている。オーストラリア勅許会計士。

最近のテニス界の新星、躍動感あふれるプレーの大坂なおみ選手に熱いエールを送っています。力感に富んだストロークは魅力的で、現在の世界ナンバーワンのシモナ・ハレプ(ルーマニア)、元ナンバーワンのセリーナ・ウィリアムズ(米)、マリア・シャラポワ(ロシア)などを撃破し、世界のランキングは21位(4月2日現在)まで上がり、さらに上が望めるとともに既にトッププレーヤーの仲間入りをしたと言えると思います。

その大坂選手は、ハイチ人の父親と日本人の母親との間に生まれたハーフで幼い頃から米国で育ち、インタビューや優勝スピーチはほぼ英語で対応しています。国際スポーツの舞台でトッププレーヤーとして継続して活躍するには流暢(りゅうちょう)な英語力は不可欠だと思います。国籍は米国との二重国籍ですが、2年後の東京オリンピックには米国ではなく日本代表として出場したいと発表され、きっと日本のエースとして活躍してくれると願っています。

◆豪州では与野党議員が相次ぎ失職

二重国籍問題では2016年、民進党の代表だった蓮舫参議院議員のケースがニュースで大きく取り上げられました。公職選挙法は国会議員に日本国籍であることは求めていますが、外国籍の人を排除はせず、外国籍を持つ人の就任が禁じられている職業は外交官だけです。内閣トップとして外交交渉にあたる首相については議論がありますが、外国籍や二重国籍の人を排除する明確な規定はありません。

一方、国籍法は22歳までに国籍の選択を求めていますが、実際は努力義務で、これまで二重国籍の解消を迫るような厳格な運用はされていません。蓮舫氏の場合、父親は台湾人ですが日本で生まれ育ち、本人の意思にかかわらず二重国籍となっていたもので、本人の説明によると、17歳の時に台湾籍放棄の手続きをしたが何かの手違いで台湾籍離脱が完了していなかったそうです。

私がかつて暮らしたオーストラリアでも、英連邦との歴史的・文化的な背景から二重国籍を保有する人はかなりいます。新聞報道によると、2016年の国勢調査で、人口約2340万人の49%が本人が外国生まれか、両親のうち少なくとも1人が外国生まれ。1千万人ほどが二重国籍の可能性があります。私は国籍は取りませんでしたが、長らく住んでこともあり、永住権は取りました。オーストラリアだけでなく、英国やニュージーランドも二重国籍を認めています(ただし英国は例外規定を設けています)。

オーストラリアでは昨年から国会議員の二重国籍が大きな問題となり、既に10人の国会議員が失職に追いやられました。オーストラリア憲法第44条(i)は、他国の市民権を有する者は国会議員としての資格を有しないと規定、市民権保有以外にも他国の影響力に対して忠誠を誓っていたり従属していたりする場合もこの条項が適用され、失職となります(私見ですが、これはある意味、一般的に考えられる「利益相反」の立場に該当すると思います。例えば、政府からの借り入れがあるなど財務的な関係や、政府と係争関係にあるなど特別な関係に近いのだと思います)。オーストラリア最高裁は昨年10月、例えば「親が外国籍で自分も自動的に外国籍を引き継いだ」ということを全く知らなかった場合でも、この条項から除外されるものではない、つまり「国会議員の資格なし」との解釈を示しています。

ターンブル首相率いる自由党と国民党の連立与党は早速、昨年末に市民権に関する登記簿への国会議員全員の宣誓を行うという対応策を取りました。二重国籍の対象になった野党議員も失職しましたが、今回の問題で連立与党も議員の相次ぐ失職により国会で過半数ギリギリとなり、今後の国会運営を含め政権にとって大変悩ましい問題になっています。

日本でも国際結婚が普通のことのようになってきました。その当事者や子どもたちは将来、国籍を選ぶという重い判断を迫られるわけですが、国の将来的な課題としてそろそろ考える時が来ていると思います。

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