п»ї 1/8計画 『WHAT^』第21回 | ニュース屋台村

1/8計画
『WHAT^』第21回

9月 18日 2019年 文化

LINEで送る
Pocket

山口行治(やまぐち・ゆきはる)

株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

幸徳秋水の『二十世紀の怪物 帝国主義』(光文社 古典新訳文庫)を読んで、日本にもスピノザ主義者がいたということを知った。本人は西欧近代の扉を開いた哲学者、バールーフ・デ・スピノザのことは知らなかっただろう。しかし、有徳なる発禁本を著した精神のおおらかさこそスピノザ主義者にふさわしい。現代イタリアの思想家、アントニオ・ネグリがスピノザの政治思想を転覆的なものとして再発見しているけれども、そこには精神のおおらかさはない。

デカルト座標を発明し、数学を代数化したデカルト、微分積分学と2進法を発明したライプニッツ、これら「近代哲学の巨人」のなかで、スピノザの数学はユークリッド幾何学のレベルでしかないように見える。しかし、スピノザは数学の自由を発見した。レンズ磨きの直感で、光の幾何学を見抜いていたスピノザだから、アインシュタインがスピノザ主義者であるのは当然のように思える。スピノザは数学の自由を発見した偉大な数学者だとしても、一般人(もしくはネグリの言うマルチチュード、私の夢想するランダムな人びと)はスピノザ主義者として死んでゆくことぐらいしかできないようだ。幸徳秋水の死刑に、スピノザ主義者としての名誉回復を願いたい。

幸徳秋水が活躍した当時(1901年)の日本の人口は5千万人程度、現在は1億2千万人程度だ。人口は指数関数的に増える、または減少する、という機械文明的な計算から脱却しよう。ウイルスを含めて、生物の個体数は対数関数的に折り畳まれると考えたい。多価関数の一つの枝で生きること、分枝の選択がありうること、カオス的な分枝もありうること、そういう数学的に自由な発想をすれば、昭和のテレビドラマ「ウルトラQ」(TBS系列)の第17話「1/8計画」が特撮の夢物語ではなく、本当に1/8の人口を実現するデータ文明の問題設定に思える。

WHAT^(ホワット・ハットと読んでください)は、何か気になることを、気の向くままに、イメージと文章にしてみます。

コメント

コメントを残す