п»ї 新型コロナウイルス禍がもたらすビジネスチャンス 『時事英語―ご存知でしたか?世界ではこんなことが話題』第41回 | ニュース屋台村

新型コロナウイルス禍がもたらすビジネスチャンス
『時事英語―ご存知でしたか?世界ではこんなことが話題』第41回

3月 23日 2020年 文化

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SurroundedByDike(サラウンディッド・バイ・ダイク)

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メディアでは国内外を問わず、新型コロナウイルスに関するニュース一色に埋められている。

感染拡散の現状と各国の対応ぶりの報道がほとんどであるなか、企業活動の観点から「災い転じて……」の意義を説くのが、英紙エコノミスト2020年3月5日版のシュンペーター欄の記事「コロナウイルス騒ぎは、やればためになる改革を示唆している―経営トップは、潜在的チャンスを見逃すべきではない」である。

確かに、個人、企業、そして国のこれからの活動に対して考える機会を提供している。それにしてもなかなか収まる気配、展望が得られないのは不安だ。(以下、記事の全訳)

ロンドン地下鉄ストから学んだこと

2014年2月のロンドン地下鉄ストは、経営理論研究者に復元力と適応力について学ぶべきことを教えてくれた。その時の地下鉄運行は部分的に停止されたが、全線不通ではなかったので、迷惑を被ったロンドン在住の人々は仕事場への通勤について一度考え直すことを余儀なくされた。オックスフォード、ケンブリッジ両大学の研究者たちによる調査の結果、約5%の人々は地下鉄が正常運行を回復した後もそれまでの路線でなく、スト期間中に新たに考えついた経路を引き続き利用していることが判明したのだ。20人に1人の割合で、通勤者は新しい改良された方法で仕事場に行くことの長期経済効果が、短期間、混乱により強いられる不都合のマイナスを上回ることを自覚したのである。

世界中で新型コロナウイルスが広がっている事態は、ビジネス世界にとってスト決行中の交通運輸労働者よりもはるかに困難な問題である。業績予想修正はその厄介な病気と遜色(そんしょく)ないスピードで世界を駆け巡る。ゴールドマン・サックスのアナリストによれば、S&P500銘柄を構成する企業の収益増加が停止することを予測している。購買担当者指数など景気を測る数値はアジアでは崩落し、ほかの地域においてもウイルスがどんどん国境を越えて拡散するにつれて悪化すると予想される。消費者は消毒ナプキン、マスクとか非常食用キャンベルスープなどを除きほとんどモノを買わない。世界的流行病の恐れにより、過去2週間の間に全世界の上場企業の株式の市場価値が7兆ドル失われたのだ。(以下、全訳続く)

◆コロナは実験の好機会

企業の中には危険が収まり次第、大部分のロンドンの通勤者がしたように漫然とまた元のやり方に戻すところもあるだろう。しかし、一方で今回の何らかの活動中断の経験を、事態発生前からすでに起きていた変化を加速させて、将来にわたってプラス効果に転換できる企業も出てくることだろう。

二つのことが特に重要である。これからの数か月間は、新しい技術によって果たして大規模に従業員が会社に来ないで働くことが可能となるのかどうかを試す巨大な実験を行い、仕事場の概念を完全に作り変えるプロセスを加速できるのだ。そして、貿易戦争の渦中にあって既に脆弱(ぜいじゃく)なサプライチェーンについて不安に思っていた企業にとってウイルスは部品調達のやり方を見直すべきもう一つの理由となったのだ。

社員のことにまず触れよう。企業は、社員の出張、会議参加あるいはそもそも会社に出てくることさえも許すべきか否かを決めなければならない。これらの問いすべてに対し、答えはますます「No」に傾くであろう。アマゾン、JPモルガンチェースなど多くの大企業は不要不急の旅行をすべて禁止した。航空会社とホテルは予約件数の急落を嘆いている。会社員の出張サポートを業務内容とする豪州の上場企業であるコーポレート・トラベル・マネジメント社は、影響が向こう6か月間続くだろうと予測している。当該社は直近年間収益予想を165%も下方修正した。業界団体のグローバル・トラベル・アソシエーションは、仕事目的の出張に企業全体では年間1兆ドル超の経費を支出しているが、感染流行が続く間にその数字は3分の1以下にまで落ち込む恐れがあると見通している。

大規模の企業による催しは次々に中止されている。米ヒューストンで毎年行われる石油業界最大のお祭り行事とスイス・ジュネーブでのモーターショーは今月開催されない。グーグルとフェイスブックは、彼らの盛大な社内宴会の一部あるいはすべてをオンライン上での開催に移行したことで「テレカンファランス」という用語に全く新しい意味を付け加えた。イタリア・ミラノとパリのファッション週間は短縮され、アルマーニ社は彼らの秋/冬のショーを一般公開せずネット上で動画配信した。それはインフォルマのようなイベント会社にとって悪い知らせであり事実、同社の株価は、とりわけ多くの著名な業種がすでに精彩を欠きつつあった2月初め以来1/5下落した。

同時に、多くの企業が社員の在宅勤務を好むようになった。JPモルガンチェースは3月3日、在米の何千人もの行員に対し、緊急時の手順を試す目的もあって在宅勤務を指示した。ツイッター社も社員に同様の指示を行った。ソニーは万一に備えて、欧州にあるオフィスの一部を完全に閉じることまでした。それでも、その措置の下で社員たちはオフィスから離れて仕事をするよう求められている。(以下、全訳続く)

◆社員の勤務スタイル改革のきっかけ

新型コロナウイルスに伴う緊急手順を踏むことで、出張費予算がどれだけ膨れ上がっていたかがわかるのと同時に、オフィススペースがいかに非効率に使われているかを知ることだろう。規模の大きな英国あるいは米国の企業は社員1人当たりで平均年間5千ドルの賃貸料を使っている。勤務時間中において、実際に机が使われているのはわずか40~50%であり、しばしばもっと下回ることがある。

データ分析会社のリースマン社の昨年の調査によれば、60万人のデスクワーク従事者を対象に行ったアンケートの結果、応じてくれた40%の回答者が、自分たちのオフィス環境が仕事の生産性を阻害していると答えたという。彼らの上司は部下が自宅で1人になって仕事をすることで本当に生産性が上がるか、少なくても下がることがないとわかれば在宅勤務させる合理性に反対することは困難に思えるだろう。投資家たちはそうなることに賭けている。先月、事業所向け伝言メッセージサービスを提供するスラック社とビデオ会議ソフトのメーカーであるズーム社の株価がそれぞれ18%および35%上昇した。(以下、全訳続く)

◆過去の知恵の賞味期限

企業が自分たちの業務について再考しているのはサプライチェーンとのかかわり方についてである。1980年代以来、大企業が今や何千ものサプライヤーに依存するに及んでサプライチェーンはより複雑化かつグローバル化した。トヨタが開拓したリーン生産方式(製造工程の「無駄」という「ぜい肉」を落としたスリムな生産方式)と部品調達のカンバン方式を取り入れて生産はより効率的になったが、企業は必要原材料在庫をどんどん減らしたために供給途絶の事態にはより脆弱となったのだ。S&P500全銘柄の中間に位置する企業はわずか66日分の在庫しか保有しておらず、いくつかの企業はそれよりもはるかに小さなバッファーしか持っていない。ブルームバーグのデータによれば、アップル社ではたった9日分しかないという。

自然災害が起きても通常、大企業は生産拠点を被害地から正常地に一時的に移すことによって切り抜けることができる。しかし、すべて対応プランの備えがある水害、地震あるいは米中貿易戦争などと違って、新型コロナウイルス下では企業の実際のあるいは潜在的な先をも含めて、下請け業者も同時に影響を受けるのだ。そのようなシナリオの下では、在庫をより多く抱えることや、サプライヤーを国内に持っていることがもはや無駄とは考えられなくなる。必要と見なされることになるのだ。

新型コロナウイルスは、出張とかリーンな(無駄をできるだけ省いたスリムな)グローバルサプライチェーンをなくしてしまうことはないであろう。中国の工場は再び始動するであろうし、ビジネスエリートたちはまもなくほぼ確実にじきに空港ラウンジに戻ってくることだろう。しかし、今回の危機は、新しいやり方を試してみるための、そして旧習にまつわる知恵を疑ってみるための機会を与えているのだ。CEO(最高経営責任者)は好機に対し反応を見せないで済ませる免疫性など持ってはいけない。(以上、全訳終わり)

※編注=この記事は印刷版のビジネスセクションに、「Plan V」の見出しで掲載されている。

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