п»ї どうしてバレたの? 架空輸出『実録!トラブルシューティング』第2回 | ニュース屋台村

どうしてバレたの? 架空輸出
『実録!トラブルシューティング』第2回

10月 31日 2014年 経済

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東洋ビジネスサービス

1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。

今回は、タイ投資促進委員会(BOI)の恩典を受けている大手自動車部品メーカーA社の実例をご紹介したいと思います。タイではBOIにより、外資の投資を促進するための法人税や、機械設備や原材料・半製品の輸入関税免税措置の仕組みがあります。このメーカーは、BOIの恩典の一つである原材料の輸入関税を免除されるという恩典を受けていました。

そもそもの発端は、タイ人副社長がこともあろうに、輸入材料を横流しして小遣い稼ぎをしていたことから始まります。原材料は、BOIよりタイ国内で加工生産した製品を輸出することを条件として輸入時の関税を特別に免除されています。当然のことながら、適正な在庫管理とBOIへの報告が義務付けられています。さて、横流しして足りなくなってしまった在庫をどうしましょうか?

苦肉の策としてひねり出されたのは、足りない在庫分の隣国へのトラックでの偽装輸出です。空のトラックは無事に隣国との国境にある税関を通過し、輸出証明書を取得することができました。

いわゆる架空輸出ですが、書類は完璧です。こちらの数字を基にBOIに対して不足分の在庫の消し込み手続きも終えました。ほっとひと安心したところへ関税局からの事後調査によって、この分の追徴課税の知らせが届きました。どうしてバレてしまったのでしょうか?

タイの税関担当官は想像以上に優秀です。監査官はすべての取引をオンラインで会社別に閲覧しています。A社のケースでは、普段は使わない陸路での取引が監査官の目に止まりました。

こうなれば真相解明までは時間の問題です。監査官の次の仕事は、確固たる証拠を入手するために国境の税関に連絡して通関時の車両重量の実績を取り寄せることです。調べてみると、なにしろ空のトラックですから車両とコンテナの重量しかなく、中身の重量がゼロだったことがわかりました。

さて、追徴課税とともに税関に踏み込まれてしまったA社には、差額の関税だけでなく、差額の2倍の罰金と金利が請求されます。また、税関からBOIへこのことを報告した場合は、BOIの恩典を取り上げられ、結果として営業停止に追い込まれることにもなりかねません。

◆当局への誠意ある対応と基本となる不正対策

こうなった場合の対応方法は、監査官と駆け引きをするのではなく、正直に経緯を説明して、過去に不正はなく、今回だけタイ人副社長が独断で行ったことを説明し、誠意をもって対応することが重要です。

今回のケースはタイ人副社長による原材料の横流しと、それを隠ぺいするための架空輸出という点で、日本の株主や経営陣も被害者であることが認められて営業停止の危機は逃れることができました。

税務関係のトラブル予防策としても心得は一つだけです。普段から担当官とは緊密に連絡を取り合い、疑問点があれば事前に相談することです。もちろん社内での不正対策は基本です。一人に権限を持たせ過ぎることが無いように、適宜のチェックが必須となるように仕組み作りをしっかり整えることが重要です。

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