п»ї 大学での知的障がい者の学びはつながってこそ価値が出る 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第232回 | ニュース屋台村

大学での知的障がい者の学びはつながってこそ価値が出る
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第232回

4月 25日 2022年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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75%が公開講座等実施

知的障がいのある人が特別支援学校を卒業した後も学べる環境を整備するために、少しずつではあるが全国の大学での取り組みが広がっている。文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課にある障害者学習支援推進室が外部機関に委託した調査によると、生涯学習講座を設置している大学の125件からの回答のうち75%が現在、「知的障害者を対象としたオープンカレッジ・公開講座等」を実施し、25%が講座を「過去実施していた」という。

このうち受講生の評価を行っていないのが82・5%、それぞれの大学が「連携している大学はない」のが77・5%であるから、各大学が「独自に」「評価を行わない」形での障がい者の学びを行っている輪郭が示された。

◆「やめた」4分の1

さらに回答した大学の4分の1が実施しながらも「やめた」ことも気になり、共生社会に向けてインクルーシブな教育を社会が実現しようとする中で、大学による知的障がい者の学びが継続する未来は少し心細い。一方で学生自身の企画がこれらの活動を支えている力強さもあり、いくつかの大学の知を結集し、学生のフィールドを広げ、地域と連携することで、知的障がい者の「学び」ままだまだ充実するはずだと思う。同調査が示す各大学の各論から考えたい。

調査では個別の大学にもヒアリング調査を実施しており、対象は札幌学院大、北海道医療大、東北大、東京学芸、淑徳大・淑徳大学短期大学部、静岡大、愛知県立大、大阪府立大、関西福祉大、神戸大、島根大、美作大、鹿児島大、長崎純心大。

1995年、日本で初めて「知的障害者を対象とした生涯学習講座」を開催した東京学芸大はこれまで開催してきた蓄積の学習方法は地域資源としてほかの地域に提供し、その影響を受けた自治体や支援者は多い。1998年に関西で初めてのオープンカレッジを開催した大阪府立大はダウン症の研究者から発展したもので、現在は1クール2年制、月1回で講義やイベントを行っている。

神戸大は最近、全国からモデルとして注目されているが、それは参加者(受講者)が大学教育の中での明確な位置づけをすることがポイントとの考えから「聴講生制度」「履修証明制度」を使っていることが他大学や地域から耳目を集める。運営は同大の「ヒューマン・コミュニティ創成研究センター」が中心で、プログラムは「学ぶ楽しさの発見」と明確だ。

◆勉強会から発展

また、連携やつながりから発生した静岡大の例がある。2005年に始まったオープンカレッジ「大学で学ぼう」は特別支援学校の進路担当教員の勉強会である「静岡県障害者就労研究会」の調査で、障がい者の就労の継続には「働く以外に生きがいが必要」との結果を受けて立ち上がったという。「大学で学ぼう」から派生する形で重度障がい者への訪問カレッジも実施している。

東北大では大学院生、学生、受講者が共同学習者という位置づけで「杜のまなびや」を運営し、鹿児島大は鹿児島市と連携し、主権者教育として「選挙コンシェルジュ鹿児島」を実施している。市内の高校、短大、大学、専門学校の学生も一緒に知的障がい者も「皆で一緒にやろう、考えよう」を大切しているという。

島根大は2007年から着任した教員の問題意識から、「知的に障がいがある人のオープンカレッジin松江」が立ち上がった。

◆私大が始める効果は大

これらの動きで目立つのが国公立大学である。地域とのつながりを重視しながら、限りある予算の中で学生の問題意識を喚起しながら、教員と学生が作り上げている事例が目立つ。一方で、大都市圏にある有名な私立大、学生数が多い大学がここに登場しないのが不思議である。

大都市圏には学生が問題意識を持って活動する場が外部にある、という解釈も一部では成り立つが、大学が大きすぎて、地域との結びつきが希薄なことが、大学と地域が連携する知的障がい者の学びが成立しない要因かもしれない。

私自身、東京で暮らし活動する中で、人が多い分、ニーズも同じようにあるのは確かである。そして地域での支援も大切であるが、若者が集い、知が蓄積してある大学を舞台にするのは重要なことである。知的障がい者を大学が受け入れる効果は計り知れない。

どこかの私立大が大学のプロジェクトとして知的障がい者の学びを展開し、冒頭の大学の連携が生まれれば、新しい流れができるかもしれない、と期待は膨らむ。どこの大学がやり始めるのだろうか。今年の楽しみにしたい。

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