教授H
大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。
ご記憶の方も多いと思うが、昔「くたばれGNP」という言葉がはやった。大手新聞の連載記事のタイトルになり、人々の共感を大いに誘ったのだ。1970年のことである。当時日本経済は高度経済成長の末期にあたり、公害や働き過ぎ、所得格差などのさまざまな歪みがあらわになった時期であった。多くの人が、もうこれ以上経済成長を追い求めても幸せにはなれないのではないか、GNP(国民総生産)うんぬんで経済を語っても意味がないのではないか、と思い始めていたのだ。
あれから40年以上が経った。用語がGNPからGDP(国内総生産)に変わったものの、同じ問いは依然として生きている。GDPの成長を追い求めることによって人間は幸せになれるのだろうか。この問いにはっきり「ノー」と答えたのが、ジョン・デ・グラーフ/デイヴィッド・K・バトカーの『経済成長って、本当に必要なの?』(早川書房、2013年)である。
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