縁の切れ目になりかねない危険な「名義貸し」
『実録!トラブルシューティング』第6回

2月 20日 2015年 経済

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東洋ビジネスサービス

1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。

今回は、数ある合弁会社設立にからむトラブルの中でも代表的とも言える「名義貸し」にまつわるトラブルをご紹介します。タイでは外国人事業法により、外国人や外国企業が過半数を所有する企業、いわゆる外資企業の事業が規制されています。そのため、会社の設立登記時に、従業員や取引先のタイ企業関係者などが株主として資本参加をするケースがあります。その中でも書類上では株主となっていながら、実際には日本側で資本金を準備することを「名義貸し」と呼びます。今回のトラブルの主役は、手続き上の名義貸し株主が本当の株主になってしまったCさんです。

会社の設立時に、A社長からきちんと事情を説明された上で、名義貸しとして名前だけの株主になることを快諾したはずのCさんですが、20年経って成長した会社を見て気が変わってしまったようです。

Cさんの言い分を聞いてみましょう。「資本金を支払ったことはありません。けれどもこの株はインセンティブとして受け取ったものなので、確かに株は自分の持ち分です。適正な金額で買い取って下さい」

会社側としてはまさに青天の霹靂(へきれき)。もちろん、「はい、支払います」というわけにはいきません。現時点でも、お互い一歩も譲らずに話し合いを続けています。
そもそも設立時には、協力し合ってタイでの事業を成功させようと、志を一つにしていたA社長とCさんです。タイでの事業は成功しましたが、こんなことが起きてしまうとお互い気分が良くありません。

◆転ばぬ先の杖 出資会社に相談を

名義貸しは、法律に違反するだけではなく、こんなリスクがあるのです。どんなに信頼できる友人でも、こうしたリスクが生じる恐れがあることを肝に銘じておかなければなりません。

家族の不慮の事故で突然お金が必要になるかもしれません。順調だった会社が急に傾くこともあるかもしれません。さらには、友人が亡くなって相続した息子はお父さんのような方とは限りません。そもそも合弁会社という選択も難しいものですが、名義貸しのその先のトラブルが予想されるやり方は避けるのが一番です。

毎回ご紹介している通り、安全策をとっていても他にトラブルの種はいくらでもあります。名義貸しによる会社設立はコンプライアンスの観点もさることながら、始まりの時点でわざわざ地雷を抱えるようなものです。幸いタイには日本の銀行や大手企業、タイの銀行などの関連会社で出資会社を持っています。タイ進出の際には、リスクを冒さずにこうした安心安全なタイ会社に出資してもらうなど、無難な選択肢をおすすめします。

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