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民主党の「沖縄差別」―岡田党首は冷淡 期待は長妻代行
『山田厚史の地球は丸くない』第38回

1月 23日 2015年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

東京にも沖縄の店が増えてきた。グルクンのから揚げに箸をつけながら、友人が「民主党は、沖縄なんてね、まったく眼中にないんだ」と言い出した。携帯を手にしている。民主党代表選挙のニュースを見たらしい。党の立て直し、野党共闘、集団的自衛権を巡る意見の違い。そんなことが話題になっていた。

「党の立て直しを言うのならね、候補者さえ立てられない沖縄を、どう思ってるんだ」。4議席全てで競り勝った沖縄の野党共闘に参加さえできない民主党の不甲斐なさを嘆く。「集団自衛権を問題にする前に、沖縄の米軍基地の事態を見ろ。民主党は現実に苦しんでいる人が見えてない」と、お湯割りの泡盛をあおった。

◆安倍政権を「支える本土」と「戦う沖縄」

民主党にとって沖縄は鬼門だ。首相だった鳩山由紀夫氏が現地で米軍普天間(ふてんま)基地の移転先を「国外、または県外に」と演説し、のちに取り消した。期待させられ裏切られ、沖縄の人は民主党に冷ややかだ。

代表になった岡田克也氏は、辺野古(へのこ)に移す計画について「基本は変えようがない」とそっけない。政調会長になる細野豪士(ごうし)氏も「日米合意がるのも現実」と多くを語らない。こんな調子では、沖縄を巡って火花が散る党首討論は期待できそうにない。

「希望の星は沖縄」という声をよく聞く。与党圧勝に終わった昨年末の総選挙で、与党が選挙区で1議席も取れなかったのは沖縄だけだ。自民党に批判的な人たちは、沖縄方式に野党共闘の突破口を求める。小選挙区制では野党の分立は巨大与党を許してしまう。

主要な争点は憲法改正、消費税増税、原発再稼働、TPP参加など。有権者に賛否を問えばはっきり分かれる。このテーマを選挙に問えば安倍政権も安閑としていられないが、ガチンコしているのは共産党、社民党ぐらいだ。民主も維新も党内がバラバラ、足並みがそろわない。

基地問題で候補者を一本化できる沖縄と本土は決定的に違う。しかも本土で沖縄の関心が薄い。安倍政権を「支える本土」と「戦う沖縄」。そんな構図が出来つつある。

本土の野党が「再び政権交代を」と考えるなら、沖縄に学ぶことが早道だろう。野党第一党の民主党にその気がない。

「オッキーナワを返せー」と歌っていた沖縄の人たちが「オッキーナワへ返せ」と謳(うた)うようになっている。

翁長雄志(おなが・たけし)知事が誕生した背景は、本土政府への愛想尽かしである。沖縄では仲井眞弘多(なかいま・ひろかず)前知事は「裏切り者」と見られた。辺野古移設反対を公約に当選しながら、本土の政権が自民党に戻るとUターンし、移設推進に転じた。見返りは沖縄振興予算の大盤振る舞い。

県選出の自民党国会議員も本土の党本部の言いなりになった。「民の心よりカネ」「長いものに巻かれろ」である。そんな政治家を沖縄県民は許さなかった。自民党県連幹事長で那覇市長だった翁長氏が知事選に打って出たのも、「沖縄の心」が踏みにじられることへの怒りだった。

◆沖縄を踏み台に日本の復興と高度成長

沖縄では面積の10%が米軍基地だ。米軍専用基地の75%が沖縄に集中する。日常化した騒音・事故・犯罪。アメリカにこんな州があったら米国民は絶対に許さないだろう。本土の人たちは見て見ぬ振りをしている。

「沖縄だから」というのは差別である。「目の前に中国の脅威があるのだからしようがない」というのは、自分たちの利便のためには沖縄に犠牲になってもらうのも仕方ない、という態度ではないか。

沖縄だけが地上戦の戦場になった。本土はポツダム宣言の受諾に逡巡(しゅんじゅん)し、沖縄を見殺しにした。施政権を米国に委ねた戦後が沖縄基地の始まりでもある。沖縄を踏み台に日本の復興と高度成長があった。

イラクやアフガニスタンで軍事活動する米軍に黒人など少数民族が多い。貧しい彼らを志願兵にする仕組みが米国にはある。背景に人種差別があるようだ。差別する側は意識しなくても、される側は敏感だ。だからこそ沖縄の人は「共闘」ができるのだろう。

沖縄が発するサインを見逃してはいけない。安倍政権は無理かもしれないが、せめて野党は「沖縄のこころ」を受け止めてほしい。

民主党代表選で印象に残ったのは、辺野古移転について長妻昭(ながつま・あきら)氏が述べた次の言葉だ。「今、明確に申し上げることが出来るのは、沖縄県民の意志がはっきりと示されている中で、私はその意志を無視するようなことは決してしないということです」。代表代行になった長妻氏の動きに注目したい。

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