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圧倒される丹念な取材と子細な描写
『読まずに死ねるかこの1冊』第8回

1月 24日 2014年 文化

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記者M

新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間100冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング。

第150回芥川賞・直木賞がさきごろ発表された。節目を迎えたこれら二つの賞について新聞各紙はこぞって特集を組んで紹介した。ただし、受賞作だからといって必ずしも読者の支持が高いとはいえないほか、作家の中には受賞作以外にこれといった作品が見当たらず「一発屋」みたいなところもあって、僕は関心はあるものの受賞作を直ちに読んだことはない。そして残念ながら、ずっと後になって読んでみて、期待を裏切られることも少なくない。

特に近年の受賞作は表現も内容もよく理解できないものが多く、とりわけ芥川賞については、「芸術性」なるものを重んじるあまり、ついていけないような作品が多い。文芸評論家の市川真人早稲田大学准教授は2014年1月11日付の朝日新聞紙上で、両賞について「芸術性と大衆性のせめぎあう地点にある」と解説していたが、近年の受賞作をみていると、年々その傾向は強まり、大衆性よりも(一般の読書家には理解できないような)芸術性のほうが重視されているようだ。
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中間層を狙う「ローソン108」
『トラーリのいまどきタイランド』第4回

1月 24日 2014年 文化

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トラーリ

寅年、北海道生まれ。1998年よりタイ在住。音楽やライブエンターテインメント事業にたずさわる。

バンコク都内にある「ローソン108」の大型店舗に先週、初めて足を踏み入れた。高架鉄道BTSのチットロム駅に直結するマーキュリーヴィレ1階に昨年9月にオープンした店舗だ。

ローソン108は、日本のローソンが「タイの消費材王」と称されるサハグループと提携し、昨年3月末にタイに出店を果たした。初めの3店舗はサハグループが運営する小型店舗「108」をリニューアルオープンし、その後、半月に1店舗のペースでバンコク都内のオフィルビルなどに出店、現在バンコク都内で28店舗に至っている。
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新しい農業スタイルが見えてきた!
『教授Hの乾坤一冊』第12回

12月 27日 2013年 文化

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教授H

大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

初めから告白してしまうと、これから紹介する本の著者は、私のゼミの卒業生である。このことを書こうかどうか迷った。だが後からフェイスブックなどで関係が知れて、「なーんだ、だから書評に取り上げたのか」などと言われたら面白くない。私は著者を知っていようがいまいが、良い本と思えば『ニュース屋台村』に取り上げる、それまでのことなのだ。

さてその本とは、久松達央著の『キレイゴトぬきの農業論』(新潮新書、2013年)である。著者は、一度は大手繊維メーカーに就職したものの有機農業に一大転身を図るというユニークな経歴の持ち主だ。ずぶの素人から農業を始め、今では立派な主業農家として自立した。茨城県土浦市を拠点に年間50品目以上の有機野菜を栽培し、自らが代表を務める「久松農園」の会員に直販している。ビジネスは大はやり、大成功だ。
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ワンアジア・ジョイントコンサート
『トラーリのいまどきタイランド』第3回

12月 20日 2013年 文化

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トラーリ

寅年、北海道生まれ。1998年よりタイ在住。音楽やライブエンターテインメント事業にたずさわる。

バンコク都内「アクサラシアター」で12月8日に開催されたAUN J クラシックオーケストラによるワンアジア・ジョイントコンサート。鳴り止まぬ拍手喝采のなか、その幕を閉じた。

AUN J クラシックオーケストラは、邦楽界で活躍する若手の和楽器奏者が集まり、世界へ向け、シンプルでスタイリッシュに日本文化と和楽器の素晴らしさをアピールする音楽ユニットだ。双子の井上公平・良平で構成される和太鼓・三味線ユニット「AUN」がこのオーケストラのリーダーを務める。彼らは昨年、日本の文化交流使としてタイ、ラオス、ベトナム、カンボジアで全29公演、1万名以上を動員した実績を持つ。
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異文化を受容する優しいまなざし
『読まずに死ねるかこの1冊』第7回

12月 13日 2013年 文化

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記者M

新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間100冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング。

もう30年以上も前の話だ。ルー・フィン・チャウという女性アイドル歌手がいた。谷村新司作詞・作曲の「スター誕生」という曲で1982年12月24日のクリスマスイブにデビューし、翌年12月に芸能界から突然姿を消した中国系ベトナム人の難民出身の歌手である。

彼女は、両親と弟とともに80年に来日し当時、神奈川県大和市に開設された大和難民定住促進センターで生活を始めた。父はサイゴン(現在のホーチミン)の高級クラブ、マキシムの舞台芸術監督、母は舞踊家。そんな環境もあってか、チャウは来日してまもなく、日本の芸能界に憧れを抱くようになった。
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パリの街散歩―上を向いて歩こう
『タマリンのパリとはずがたり』第2回

12月 13日 2013年 文化

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玉木林太郎(たまき・りんたろう)

経済協力開発機構(OECD)事務次長。35年余りの公務員生活の後、3度目のパリ暮らしを楽しむ。一万数千枚のクラシックCDに囲まれ、毎夜安ワインを鑑賞するシニア・ワイン・アドバイザー。

「建物は所有者に属するが、その正面(ファサード)は全ての人のものだ。」とはヴィクトル・ユゴーの言葉らしいが、パリの街を歩けば建物の壁にはめ込まれたプレートがやたらに目につく。先日も場末の変哲もない道の変哲もないホテルの壁に「周恩来が1922年から24年までこの建物に住んだ」と彫像入りで立派なプレートがあるのを見つけた。当時この建物に在欧州の中国人青年の共産主義組織(旅欧中国少年共産党)の本部が置かれ、その機関誌の印刷を若き鄧小平が担当して「ガリ版博士」とあだ名をつけられていたそうな。

パリに来てすぐのころ、パンを買いにサン・ジェルマン・デ・プレ界隈を歩いていたら、とあるバールの脇の扉に小さめのプレートがある。近寄ってみると≪リシャール・ヴァグネールここに住む、1841年10月30日から1842年4月7日≫と読める。おお、ワグナーの失意のパリ滞在(1839年から)の最後の住処(すみか)はここか、と大いに感じ入った。
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日本を破壊するブラック企業
『教授Hの乾坤一冊』第11回

12月 06日 2013年 文化

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教授H

大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

ある日新聞広告を見ていたら目に留まったのがこれから紹介する本、今野晴貴著『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文藝春秋、2012年)である。自分の無知をさらすようで誠に恥ずかしいのだが、それまで私は「ブラック企業」という言葉を知らなかった。一体どんな企業だろうと思って大学生協に注文し、手にしてようやくその意味するところがわかったわけである。

ゼミの学生に聞いたらもちろん全員がこの言葉を知っていた。なかには、本書にも出てくる居酒屋チェーン店Wの名前をブラック企業の代表例として声に出して挙げる学生もいた。就職活動をする学生は、ブラック企業に就職してしまったら命取りになるから、知らないはずがないのである。そんなことも知らないでいたとは、私は実にのんきな教師だ。
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美しくも苛酷な芙蓉の高嶺
『読まずに死ねるかこの1冊』第6回

12月 06日 2013年 文化

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記者M

新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間100冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング。

関東地方はいま、晩秋から冬へとせわしく移ろうさなかにある。昼前はとくに空が碧(あお)く、空気が冷たくて心地いい。オフィスで机に座っているのが恨めしくなるほどだ。残念ながらオフィスから富士山は見えないが、荒川をわたって東京の対岸のすぐのところに住む僕の家からは、天気がよければ見ることができるし、通勤電車の車窓からもビル群の向こうに見える。この時期の富士山は空気が澄んでいて、どこから見てもとくにきれいだ。

南米での勤務を終えて1996年に帰国した後、99年にバンコクに赴任するまでの3年ほどの間、わが家では少なくとも月に1回は富士山に出かけた。春や秋は毎週のように出かけた。都内杉並区の社宅から中央高速道を経由して車で2時間ほど。富士山は、快適なドライブと雄大な自然を提供してくれた。
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日本の農業を破壊したのは誰か
『教授Hの乾坤一冊』第10回

11月 22日 2013年 文化

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教授H

大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

日本の農業は謎だらけだ。たとえば1990年代、ガット・ウルグアイラウンド(関税および貿易に関する一般協定の多角的貿易交渉)の農業交渉で日本がオレンジ・牛肉の自由化に踏み切ったとき、「これでミカン農家も畜産農家も壊滅的打撃を受ける」という声高な批判があった。私も大いに危惧したものだ。しかしそのようなことは起きなかった。今でもおいしいミカンを食べられるし、和牛に至っては世界から注目されている。批判の根拠がなんだったのか今もって謎だ。

もう1つの大きな謎は米だ。米の輸入自由化には各層から反対が巻き起こり、「1粒たりとも米入れず」などという戦争中のようなプロパガンダさえ掲げられた。輸入を最小限に抑えるために、現在では輸入米には800%近い関税がかかっている。その結果どうなったのか。米作のプロ化は遅々として進まないばかりか、農業就労者は高齢化するばかりだ。1961年の農業基本法が目指した農業のプロ化、すなわち主業農家育成が遅れているのが米作なのである。プロ化の進んだ畜産とは大違いだ。なぜなのだろうか。
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新しい民主主義社会をめざして
『教授Hの乾坤一冊』第9回

11月 08日 2013年 文化

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教授H

大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

行政は一度決定した計画を変えない。計画が大昔作られたもので、現状がどんなに当初と変わっていても、そのまま実行しようとする。そんな例はどこにでもある。こうして、大多数の市民にとって不必要であるばかりか迷惑でもあるような道路や施設が平然と造られる。市民はそれを半ばあきらめをもって受け入れる。私もその一人である。

しかし、國分功一郎著『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎新書、2013年)を読んで少し考え方を変えるようになった。市民の声をなんらかの形で行政に反映させないと、不必要な建築物や道路で溢れかえるばかりでなく、民主主義の根幹が脅かされる可能性があることに気づかされたからである。
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